めしいらず

魔術師のめしいらずのレビュー・感想・評価

魔術師(1958年製作の映画)
3.2
魔術、神秘、死後の世界、奇跡、愛。科学の側に属する者はそれら非科学的なものはないと言い、非科学の側に属する者はあると言う。でも…。悪戯の幽霊に本気で恐怖を感じ慌てふためく医師。魔術の種をバラされて消沈する魔術師。応答がなくても宗教に救いを求めるアル中。ただの液体も媚薬と言われれば易々と信じ欲する者たち。彼らはそれらの有無を、真偽を言い切れない。容易に信念がぐらつく。それぞれが科学に非科学に固執するのは、そうしていないと心の平衡を保てないからだろう。何かに縋っていないと生きていけない心の弱さが誰にでもある。何につけてもあると思う者にはあり、ないと思う者にはない。所詮はそれだけのことなのだけれど、それでもその間で揺らいでしまうのが人間なのだろう。
ベルイマン作品らしい画の陰影美。冒頭の木漏れ日のショットがあまりに神秘的で美しい。
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