ねまる

ハート・ロッカーのねまるのレビュー・感想・評価

ハート・ロッカー(2008年製作の映画)
4.0
"戦争は麻薬だ"

何のために兵士は戦場へと向かうのか。

自分の命をかけた他の何とも変えられないスリルはまるで麻薬のように忘れられなくなるからか。

戦場に行った兵士たちは人を殺すという感覚がおかしくなる。

まるで戦闘ゲームで敵キャラを撃つように、イスラム兵に連射する。
イスラム兵と分からなくても怪しければ銃口を向ける。

こんなシーンがあった。
自分勝手で怖いもの知らずの爆弾処理のジェームズ(ジェレミー・レナー)の護衛につくサンボーン(アンソニー・マッキー)とエルドリッジ(ブライアン・ジェラティ)が
誤爆ということにして、ジェームズを殺してしまおうかと会話する。

普通の現実ではあり得なくても、
そこでは殺してしまおうという考えがふと出てきてしまうのだ。

そこから生きて帰ることにも代わる達成感は得られなくなってしまうのだろうか?


もしくは自分に出来ることはそれしかないと思うからだろうか。

自分には爆弾処理が出来る。
そのことによって多くの人を救うことが出来る。

家族には、その代わりない一人が必要だとしても、彼はその命をかけて、戦場に行くのだ。

たとえ彼はヒーローでなくても。

そう、この話は国のために命をかける男たちの美談ではない。

手持ちカメラでリアル。
その静かさの中に緊張感が詰まっている。

イスラム兵たちとの撃ち合いも、相手を撃ち殺してかっこいい終わりではなく、
敵が出て来ないことを日が暮れるまで待って、
そろそろ帰るか、と退散するのだ。


ジェームズ、サンボーン、エルドリッジのそれぞれ背負った思いが違っていて、3人共演技がすごくいい。

手持ちカメラで戦場での撮影は、カメラの前の芝居ではなく、細部まで兵士を演じ切っていたことがビシビシと伝わってくる。

ジェレミー・レナーは終始多数賞を受賞したことも頷ける素晴らしい演技だった。

セリフのない中で、感情を、特に目を使って表すシーンは、
言葉で説明されるよりよっぽど伝わってきて苦しかった。

エルドリッジも一番下っ端でこき使われているように思いながらも、ある出来事がきっかけで感情が爆発するシーンがすごく好きだった。

こんな思い背負ってるんだと抱きしめてあげたくなった。

サンボーンもいい、くらいに思ってたけど比較的終盤の車の中でのジェームズとの会話のシーンがめっちゃ良くて、
うわぁ!!!とかき乱された感じ。

言葉にする場面と言葉にしないで訴えてくる場面のバランスが良いのかも。

とにかく3人とも素晴らしかったです!

ところで最後まで納得した答えが出せない。
ジェームズが大好きな1つは何?
ねまる

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