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女相続人のzhenli13のレビュー・感想・評価

女相続人(1949年製作の映画)
3.9
許すということ、他人を受け容れるということには妥協とか打算が含まれるとしたらこのオリヴィア・デ・ハヴィランドは妥協や打算などということをできるはずもなく、(ロマンスを肯定しながらも処世術としての妥協や打算を指南するのが叔母役のミリアム・ホプキンス。ルビッチ作品でのミリアム・ホプキンスが大好きだが、歳とってからの本作の役も悪くなかった)彼女の許さなさ、他人を受け容れないという決意は、名実ともに頑なに扉を閉ざす行為となる。それを成したときの彼女の顔貌、それまでずっと険が強くいじけた感じだったのが、さいごになって初めて行為と考えが一致したような、毅然とした表情になる。

美しく聡明であったらしい母親とハヴィランドをつねに比較する父親が自分を愛していなかったと思い込み、父の言うとおりモンゴメリ・クリフトが財産目当てで自分に求婚していると思い込み、両方ともそれが真実であるかどうかは観る者にも明かされない。特にモンゴメリ・クリフトの真意のわからなさはサスペンスともいえる。真意というより、彼ら自身も0か100かではなかったのだろう。しかしハヴィランド演ずるキャサリンにとって、真意は0か100どちらかでなければいけなかった。父を拒否し(しかし財産はしっかりゲット)クリフトを拒否し、ひらかれた世界そのものを拒否し閉ざすことを選んだ。

彼女は将来きっと因業婆になるであろう。はっきりいって、こういう女性は大好きだ。そうやって世界を拒むエネルギーを、一生たぎらせ続ける存在であってほしい。
などということを想像させる優れた脚本でもあった。
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