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港の日本娘のmingoのレビュー・感想・評価

港の日本娘(1933年製作の映画)
4.2
長い浮世に短い命さ。
そうださよならだけが人生でそれを表現できるのが映画だと言わんばかりの傑作。マキノ「港祭りに来た男」と全く真逆の趣で、清水宏的感傷風景が存分に発揮された初期サイレントの傑作。
横浜と書いてハマ、そうこの私も横浜育ちのハマっ子である。横浜といえば住んだことがある人なら実感するのはとんでもない数の坂道だらけの街だっていうこと。及川道子と井上雪子2人が歩く道も今の横浜と違ってシンプルな道でそれが「港町」をより一層感傷的にさせる。少し坂になった道、いつか2人で歩いた道、これから歩くであろう道。道は人生を写す。
モガ及川道子も良いが小津「大人の見る繪本 生れてはみたけれど」でもお馴染み、冴えない画家役の斎藤達雄がいかにもで憎いほど良い。キュビスムっぽくもあり表現主義に触発されたであろう絵が海面に佇む。所業無常の響きあり、である。そして炸裂するいつもの横移動。全盛期に比べるとドリーよりパンの方が多用されていたように感じた。実験的要素も少ならかず感じられ、己は哀しくないのにどこか悲哀を感じざるを得ない出会いと別れが行き交う港町を写した清水宏の初期衝動的傑作。
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