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オルフェのsayasのレビュー・感想・評価

オルフェ(1950年製作の映画)
4.0
摩訶不思議な死神の世界を見た!
ギリシャ神話のオルフェウス・無意識的世界を題材に現代作品に移し替えた作品。死と生の境を彷徨する詩人の姿に、俗世を超越した耽美な夢幻の世界に陶酔。彼の詩的テーマを託した、妖しい作品で逆回しを多用した繊細なトリック撮影、液状化した鏡を通り抜ける冥界往還...冥界の時間の流れは現世とは全く違うものなんだろうか...鏡の向こう側の世界《Zone》と呼ばれる異空間の移動はまるでアインシュタイン以降の「空間と時間は切り離せない関係にある」という一般化された認識を覆すようなファンタジックでふわふわとした浮遊感ある夢心地の気分だった。『詩人の血』でも感じたけれどもこれ程死の世界や鏡に執着するコクトーはもはや病的すら感じる程傾斜を深めている。そしてマリア・カザレスの冥界の女王の圧倒的存在感。

鏡。人は鏡のなかに年老いてゆく自分を見る。鏡はわれわれを死に近づける。
───ジャン・コクトー
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