Daisuke

アレックスのDaisukeのレビュー・感想・評価

アレックス(2002年製作の映画)
5.0
[時はすべてを破壊する]

映画の終わりからスタートし、過去へと遡っていく時間逆光スタイルの映画。

冒頭から縦横無尽に飛び回るカメラワークと闇と赤い光が交錯して抽象的な画面が続く。
男たち二人は秘密のゲイクラブである男を探している様が映し出される。
この時の画面構成が一見乱雑に見えるようで、
緻密な計算の元に光と構図を操り「混沌」を生み出している気がした。
これは後々わかる彼らの心情表現とともに、この映画のテーマでもある「時間」にどうしようもなく彷徨う様にも見えて本当に素晴らしい。
(ちなみにあのゲイクラブで目的の男を探すシーンは、最近の映画『サウルの息子』の画面構成に似た効果を感じた)

画面がカチっと固定されたところで、
あの永遠とも思えるほど長い「地獄の時間」が映し出される。

そのシーンが終わり、さらに前の時間、前の時間と向かうと、私たちはどうやっても抗えない「時間」という事を強く意識せざるえなくなる。
冒頭からラストシーンまで、すべてのシーンの繋ぎを天井や物陰などでシームレスに繋ぎ、ひとつの長回しのように見せている事も、時間という概念を意識させる要因のひとつだと思った。



--ここから少々ネタバレ(厳密には考え方)--








・最後ベッドの後ろに映し出されるあのポスター
・流れるベートーベン交響曲第7番,第2楽章
・そして彼女の名前「アレックス」

ここから考えるとやはりキューブリックの
『2001年宇宙の旅』『時計じかけのオレンジ』
の影響下にある作品だったと思う。
『2001年の宇宙の旅』の中でも「赤い色」は強烈に描写されていて『アレックス』のカメラワークや色彩を見ていると、何か「胎児がお腹から出てくる時」や「宇宙」といったキーワードが頭によぎった。

それと、レイプされる側の女性の名前が『時計じかけのオレンジ』のレイプを行う側である「アレックス」という皮肉にも意図を感じてしまう。
『時計じかけのオレンジ』でのアレックスは強制的に暴力映像を見せられ去勢されそうになるが、
このアレックスという映画を見ていると、一瞬あのシーンを思い出してしまった。
Daisuke

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