ひでやん

ライフ・イズ・ビューティフルのひでやんのレビュー・感想・評価

5.0
久しぶりに再鑑賞。

監督、脚本、主演のロベルト・ベニーニのユーモアな演出が冒頭からラストまで散りばめられている。

冒頭、グイドがドーラと出会う場面に様々な要素が詰まっていて完璧な演出だと思った。
「自分はグイド王子。ラクダやダチョウを飼っている。」
この台詞にある王子は、直後に空から降ってくる女性を「姫」と呼び、恋するためにある伏線で、ラクダやダチョウを飼う冗談は、陽気で明るいキャラを鑑賞者に印象付けている。

どんな状況に置かれても、ラストまでそのキャラを貫き通すから名作になった。

お礼に貰った6個の卵はオムレツを作るためではない。ヤバイ、卵男だ。隠れよう、というため。

置いてある帽子と自分の帽子をすり替える場面はただのイタズラではなく、濡れた帽子を乾いた帽子に交換してもらうため。

叔父の紹介で給仕の仕事をするグイドが出したなぞなぞの答えも、グッドタイミングで言わせるため。

ユーモアな演出が伏線であり、回収することで笑いを取るから演出に無駄がない。

ユダヤ系イタリア人のグイドはドーラと出会い、結婚して息子が生まれ、夢の書店を開く。
ここまでの展開はまさにハッピー!
この後、ガラリと急展開。
グイドに待ち受けているものはドイツ・ナチスによるホロコースト…。

ラース・フォントリアーがこの映画を撮ったら、それはそれは救いようのないエグイ作品になっていただろう。
そもそもタイトルにビューティフルって付けないだろうな。
ライフ・イズ・ダークでお送りするだろう。

強制収容所の場面は、子供に辛い気持ちを微塵も見せず、深い愛情と希望を持たせる嘘がなんとも切なかった。

初めて観た時、こんな悲しい物語のタイトルがなぜビューティフルなのか分からなかった。
再鑑賞した今、改めてタイトルを考えると、視点が違うんだ、と思った。
自分の解釈は違うかもしれないが、
前半は主人公がグイド。
幸せな家庭を築いて、夢だった店を開くグイドの物語。
自転車に妻と子供を乗せて、家族3人乗りする場面で、きっとグイドは心で叫んだと思う。
「ライフ・イズ・ビューティフル!」

後半の主人公はジョズエ。
トラックの中で不安になるジョズエに父が言う。
「どこへ行くのか言わない。その方が楽しいだろう。」
父と一緒にゲームに参加。
1000点で一等賞のご褒美が貰える。
父に言われた事を守り、かくれんぼ。
本物の戦車に乗り喜ぶジョズエは、心で叫んだと思う。
「ライフ・イズ・ビューティフル!」
ひでやん

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