カルダモン

シモーヌのカルダモンのレビュー・感想・評価

シモーヌ(2002年製作の映画)
4.4
ハリウッドと映画制作と俳優について、たっぷりの皮肉を込めたコメディ。落ち目の映画監督が熱狂的なファンである男からCGで自分好みの完璧な俳優を作り上げられるPCを渡され、映画界で再起をかける。創り上げた女優「シモーヌ」が実はCGであるということは監督以外の人間には一人たりとも公表せず、あの手この手で実在する女優なのだと信じ込ませる。事は次第にあらぬ方向へと一人歩きし始め、監督一人で制御できるレベルを遥かに超えていく。

初めて観たけれどとっても面白い。監督作では『ガタカ』の評価が高いですが、私的にはこちらを推したい気持ち。

まず落ちぶれた映画監督を演じるのがアル・パチーノで名前がタランスキーっていうのがジワジワくる。絶妙なヨレヨレ具合とか、運動不足感まる出しの感じがたまんない。タランスキー自身が四苦八苦しながら女優を演じる点も素晴らしい。マヌケな絵ヅラなんだけど涙ぐましい姿。
俳優に対する熱狂的な信仰心や、本人不在の偶像崇拝。女優と監督。テクノロジーの進化と演技と演出。ハリウッドにまつわる様々なことを程よいアイロニーで見せてくれる。『ガタカ』と同様に起承転結の「起」の部分が弱いんだけど「承転結」が面白いのでスルッと観れてしまう。スタイリッシュな構図や絵作りが効いているので、見た目も楽しかった。