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世界大戦争のHKのレビュー・感想・評価

世界大戦争(1961年製作の映画)
3.7
東宝のSF特撮映画。監督は「社長シリーズ」などの松林宗恵。キャストは宝田明、フランキー堺、星由里子などなど

戦後16年経過し、急速な復興を遂げた日本。一方世界は同盟国と連合国の2大陣営に別れ、お互いに核兵器を持ち牽制し合っていた。しかし、日本の庶民や最前線で働く隊員含め誰も戦争を望まない。しかし、そんな彼らの想いとは裏腹に上層部の判断で核戦争の火蓋が斬って下ろされてしまった…

東宝特撮の中では一番胸糞悪くて、後味悪い反戦映画だと思いますね。こういうの大好物なんですよ。でも、ちょっとばかり作品から漂うウェットな雰囲気には邦画の嫌な部分が入っているので、そこを除いては良かったのかなと思いますね。

終盤に至るまで、基地で働く職員や隊員の動向を描く場面と、日本で暮らしている一般庶民の人たちの日常の場面で構成されている。この対照的な生活環境ながらもお互い人徳者が溢れていて、誰も戦争を望まない人たちが多いという所がより終盤の悲惨な展開に拍車をかけている。

当時はベルリンの壁が作られたり、キューバ危機に陥ったりと、東西の緊張感が最も張っていた時期に製作された作品だということで納得できる。

この映画の面白い所は戦争狂のような、右翼脳の狂った強硬派を描かずにしっかりと作品を織りなしている部分かもしれない。これでそういう存在を描けばそいつらを悪者として描いて善悪二元論で片づけられてしまうところを、敢えて全員を「良い人」や「常識人」として描くことでそういう人たちだけでも戦争に発展してしまう虚しさを描いているのかもしれないです。

終盤の核爆発のシーンなどは当時の特撮ながらもかなり迫力がありとても凄いと思いましたね。細かいカットで国会議事堂や建物群が爆破していくところを目まぐるしく見せられるだけでかなり迫力がありましたね。流石の東宝特撮と感心しました。

登場人物もフランキー堺や宝田明などの魅力ある方々の温かみある演技が、より悲劇性に良い味を加えているのだと思う。一般市民はどれだけ頑張っても戦争に対しては本当に無力なのだと思い知らされる。

北朝鮮とかの動向もあるけど、本当にその日が来てしまうのが怖いですね。
日常が急に終わってしまう。戦争以外にも南海トラフなどの大地震、災害などで終わってしまうこともあるかもしれませんが、いつ人間が死ぬかなんてわからないので、あまり悲観的に考えずに今を楽しく生きればいいのではないのでしょうかね。

最後はこの映画のフランキー堺さんみたいに、逃げずに家族と日常を過ごしてラストを迎えたほうがいいのかもしれません。
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