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天使の分け前のHKのレビュー・感想・評価

天使の分け前(2012年製作の映画)
3.8
『ケス』『SWEET SIXTEEN』などのケンローチ監督によるイギリス映画。キャストはポール・ブラニカン、ジョン・ヘンショウ、ガリー・メイトランドなどなど

育った環境のせいで喧嘩沙汰の絶えない青年が結婚して子供が出来たことを皮切りに更生しようと三人の同じ成らず者の仲間たちと一緒に社会奉仕活動で奮闘する。その奉仕活動の指導者のウイスキー愛好家の下でテイスティングの才能があると言われた主人公は仲間たちと大勝負に出る。

ケンローチ監督による社会派映画。しかしハートウォーミングでスパイ活動のシークエンスなど、どこかしら娯楽要素が強い作品となってる。最後はハッピーエンド。

成らず者たちが再起をかけて何かを達成しようと隠密活動までしてしまう所はなんか独立愚連隊みたいにも感じる。全体的に負け犬からのワンスアゲイン感が出ていて良かったと思いますよ。

特に今回は毒素こそないものの、しっかりと贖罪というものをテーマにもしており、主人公たちは絶対に許されないような傷を負っている。そういう所もいい加減にせずにしっかりと描くのがケンローチ監督の良い所。

しかし、全体的に軽快なテンポであまり鬱屈としたり重い雰囲気でだれることなく進む所はいつものケンローチ作品とはまた異なる。ケンローチ曰く毎回作る際にはテイストを変えると言うが、今回は岡本喜八とかも参考にしているのかな。喜八ラブのせいでこんなとこまで喜八って言及するの俺も何とかしたい。

ワインの名産地のグラスゴーにおける社会問題のスラム化を合わせて、社会問題を娯楽作品に昇華するという試みは、やはり近年評価されている是枝監督やポンジュノ監督と肩を並べる一貫とした取り組みをやっていて凄いと思いました。

終盤の隠密活動でワインを盗む作業を丹念に見せる所は映像的にもうちょっと盛り上げたほうが良かったんじゃないのかなっと思ったりもしますが何だかんだで緊張感やサスペンスは張っていて良かったですね。

最後あんなに頑張って盗んだワインを…ああって思っちゃったけど最終的には落語的にしっかりと起承転結がしっかりと終わって良かったですね。

いずれにしても見れて良かったと思います。まあ、個人的にはもうちょっと毒素強いケンローチ作品とかのが好きなんですけど、悪くなかったですね。
HK

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