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ほえる犬は噛まないのHKのレビュー・感想・評価

ほえる犬は噛まない(2000年製作の映画)
3.8
『パラサイト半地下の家族』『グエムル漢江の怪物』『殺人の追憶』などのポンジュノ監督の商業映画デビュー作品。キャストはぺ・ドゥナ、イ・ソンジェ、コ・スヒなどなど

妊娠中の妻を抱えながら、大学教授のポスト争奪戦の賄賂の資金繰りに苦しむ一人の冴えない非常勤講師がいた。彼は隣室で吠える犬の鳴き声に腹を立て、その犬を拉致し、その犬を地下室のタンスに閉じ込めてしまうのだが…

ポンジュノ監督はデビューから、韓国の不況下における歪な格差社会構造を団地で起こるとある事件を基に浮彫にしていくということをやっていました。後年のパラサイトなどにも通じるように建物の階層構造を見事に利用しています。

劇中では車のサイドミラーを飛び蹴りで吹っ飛ばすという後年のポンジュノの映画でも精通するコメディ演出をやっていてそこがとても良かったですね。

また、ダニーボイルとかも上手いのですが、劇中の追っかけアクションをふんだんに利用しているのも素晴らしいと思いましたね。やはりこういう駆け引きとかが非常に上手いと言いますか。

登場人物のキャラクター付けが表面的には良い人ぶっていても、陰ながらとんでもないぶっ飛んだことを悪だくみしているというような所がとても良かったですね。それぞれが闇を抱えていると言いますか。

また、ポンジュノこの映画の時点で、霧を効果的に物語を促進させるために利用しています。特にワンちゃんが失踪してしまう演出などであそこまで見えなくなるガス散布を使うのはすごかったですね。当時丁度SARSとかが流行ってた時代を反映しています。

ワンちゃんの扱いぷりがやはりポンジュノすごいえげつないと言いますか、キムギドクあたりもえげつない扱い方を『受取人不明』とかでやりますけど、ポンジュノの方がえげつないんじゃないかと思いますね。

劇中に登場する主人公は序盤から明らかにとんでもないことをしてしまい、そのことを次第に後悔して罪の意識に駆られるのですが、後ろ姿を見てもらっても気づいてもらえない。許されることがなく暗黒面に墜ちて行ってしまうような何とも言えない終わり方が溜まりませんでした。

黄色い雨合羽をしたペ・ドゥナが愛らしい。鼻血を出してもあまり魅力的な顔を保てるのは彼女ぐらいなのでしょうかね。

いずれにしても見れて良かったと思います。やはり劇中における様々な映画的演出は素晴らしいと思いましたね。
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