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46億年の恋のsoffieのレビュー・感想・評価

46億年の恋(2005年製作の映画)
4.5
2005年公開

三池崇史監督作品

原作は正木亜都
小説「少年Aのえれじぃ」
(正木亜都とは梶原一騎と実弟真樹日佐夫の共作名)

この映画を見るきっかけは
イイネを頂いたFilmarksのユーザーさんがレビューを書いてるのを見て、松田龍平の知らない映画があるなぁ…とチェックしたから、Huluで配信していたので見てみた。

ぼぼ有吉(松田龍平)と香月(安藤政信)2人の話し。

フライヤーの写真からしてもうBL臭がもんもんと漂っているのが気になっていたが、映画ののっけから半裸の刺青の男性の激しいダンス(コンテンポラリー)と
老人の「村の男が成人する時の儀式」の説明が…😳🤭ああ、この映画はガチにそっち系の意味が根底にあるんだな、それを分かって鑑賞しろという伏線なのねと思った。

まるで舞台を見ているかのような場面構成と、刑務所の中の受刑者の服が前衛的

偶然、同じ日「殺人罪」で入所した
有吉(龍平)と香月(安藤)
有吉はゲイバーで働いていたが、客にホテルに連れ込まれ性的暴行を受けた後、半狂乱になって加害者を殺し約8時間に渡って遺体を損壊させたことで、暴行に対する正当防衛が成立せず殺人罪で有罪になった。

一方、香月は入所は初めてでは無いが今回は女性を強姦して、その女性が自殺した事件とその後道端で喧嘩相手の男を殴り殺した事で起訴され殺人罪が成立したいきさつがある。

たまたま同じ日に入所したことで
初めて刑務所に入った有吉を、なぜかことある事に庇う香月。

香月は黙っていれば同性でも目を止める男前で精悍な身体付きと、人目を引く左腕から背中に続く刺青。
気に食わない事があると相手が警官だろうと容赦せず狂犬のように殴り掛かり周りが止めに入るまで殴り続ける凶暴な所がある、刑務所の中でも誰も香月には逆らわないし、近付かない。

有吉は刑務所の中では新入りの別嬪さん扱いをされるが、有吉にちょっかいを出そうとした最初の悪い奴等が、香月に半殺しの目に合わされてから誰も手を出さなくなる。

不思議な場面構成と場面展開。
刑務所の有吉の寝床の壁の穴から見える
月に向かって飛ぶロケットと、反対側にある巨大な古代遺跡のような崩れかけたピラミッド。

「天国と宇宙ならどっちに行きたい?」と有吉が尋ねる

「宇宙かな」と香月が答える
「どうして?」
「宇宙の方が人が少なそうだから」
「僕もそっちに行ったらダメかな」
「オマエ、汚れてねーから」
「僕も汚れてるよ」

2人が会話する場面はここだけ。

その後、事件が起こり物語は意外な方向へ進んでいく。

⚠️ネタバレ⚠️⤵︎⤵︎⤵︎⤵︎⤵︎⤵︎⤵︎

















この映画は男しか出てこない。
むさくるしい刑務所の中の囚人同士の話しなのに、やけにキレイな男ばかり。
しかも一人一人個性的なのが気になった。

原作が正木亜都という作家の小説と書いてあったが、映画化された小説の著書なのにWikipediaが無い。

「46億年の恋」で検索したら梶原一騎の名前が出てきた。
そして、この「少年Aのえれじぃ」に出てくる監房の中の青年達は
「全部梶原一騎の生み出した、明日のジョーであり、タイガーマスクでありそれぞれが作品の主人公だった彼等の集大成の珠玉の作品」と書いてあった。
この小説は梶原一騎のほぼ遺作である。


😱😱😱なんですってー!!!!!!!!!!!!!!

梶原一騎の生み出した主人公達が最後に刑務所の監房に集められて、誰が香月とヤッたのかって話で刑事に締め上げられてる!!

そして、香月に僕じゃダメかな、と関係を持ちかけて「こっち側に来たら狂っちゃうから、オマエはアッチ行け」と言われた有吉がヤれなかったら、せめて僕が殺した事にしたい。と犯行を自白するが…。

含みと匂わせだけでお腹いっぱいになりそうなストーリー。

梶原一騎の生い立ちと実際に刑務所に入っていた経験。

目を見交わしただけで相手に男惚れする、一目惚れの瞬間。

香月の生い立ちがあまりに過酷で、自分の優しさや想いを相手に伝える事が出来ない絶望。

香月は有吉に出会って生まれて初めて人を好きになったのだろう。

でもそれは今まで社会のド底辺で暴力だけを盾に怒りと空虚だけが全てだった香月にとって「絶望」でしか無かった。

有吉が自分の事を好きなんだと知った事と、その時、空に美しい虹が出ていたこと。

あの虹は何を意味するのだろう。

三池崇史監督のなんだかホモくさい映画だなと思っていたら、昭和の少年漫画の大ヒットメーカー梶原一騎の遺作の小説だったという衝撃!!

明日のジョーを読んで「…なんか男同志の友情ってエモい」

タイガーマスクの孤独さって「…なんだろう、なんかエモい」

空手バカ一代って格闘技漫画だけど「…なんだろうなぜかエモい」

年の離れた兄の部屋にあった少年漫画を読んでは、なんだかモヤモヤしていた長年のモヤモヤが今、答えが明らかにされ扉が開かれ虹の向こうに飛んで行った、このスッキリ感!!

私の腐女子レーダーは既に小学校の時から正確に作動していた!👍🏼✨

原作者が認めた
男が男に惚れて、恋心を抱く話し

汚れきった自分の汚泥にまみれた奥深くに隠された、本人も知らかなかった透明で純粋な一番綺麗なもの。

憧れと諦め。

「好きだと気付いたら生きて行けなくなるほどの愛」というものを
私はこの「香月」に出会うまで知らなかった。

2人が初めて出会う時、2人とも真っ白な衣装を着ていたのは、香月と有吉の2人の純粋さを表していたのかもしれない。

さすが大島渚監督が遺作「御法度」の主人公に抜擢した松田龍平。

彼に恋した男は皆生きては行けなくなる。

「御法度」の時は「魔性か??????」
と疑問しか無かったが
この「46億年の恋」の有吉は
非常に魅力的だ、他のどの作品より松田龍平が本当に良い!

原作の小説を読みたいが
電子書籍になっていない上に
Amazonで単行本の古本が5千円~1万円の値が付いている😱

何も知らずに観た映画の
原作に込められた梶原一騎の想いを、三池崇史監督が気鋭の俳優陣で映画化した名作。

映画の題名がなぜ「46億年の恋」なのか
冒頭の舞を踊った男は刺青が香月と一緒だったが、ではあの少年は有吉を意味するのかな?

有吉が香月に憧れたように
あの少年も舞の踊り手の男に憧れていると言っていたから、つまりは輪廻の前世からの繋がりを意味するのかな…

でも46億年まで遡るとミトコンドリアになっちゃうんじゃないのかな?
それくらい太古から繋がっている
混じり気の無い純粋な恋という事なのか!?

…誰か、水城せとな先生かよしながふみ先生、志水ゆき先生、中村明日美子先生!!漫画化してください。

原作者の意図を知った上で観ると
泣く映画。

そして観たあとものすごくいろいろ後を引く。

梶原一騎は池上季実子を引き抜いて、独立事務所を設立した人だけど…。

生涯忘れられない人(男性)がいたのかな?

酸いも甘いも通り越して、何度か地獄も見た男の書いた最後の小説は、あまりに美しく哀しい、驚くほどピュアな恋の話し。


そんな事をふつふつと考えされられる映画。
soffie

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