マヒロ

ブラザー・ベアのマヒロのレビュー・感想・評価

ブラザー・ベア(2003年製作の映画)
4.0
この前に観たディズニー長編アニメがおちゃらけ100%な『ヘラクレス』だったからギャップもあったのかもしれないけど、かなり硬派でまじめなつくりの映画だなと思った。

イヌイットである主人公・キナイの部族以外は人間は一切出てこず、動物たちも含め一部のモブキャラを除いて男キャラのみで色恋沙汰は一切なかったりと、かなり登場キャラクターや展開が絞られている印象。全体的なノリやシチュエーションは全く違うけど、同じディズニーの『ジャングルブック』を思い出した。

本作のテーマは一言でいうと「命」で、重く説教臭くなりそうな題材ではあるんだけど、シンプルかつ湿っぽくないストーリー運びがそれを感じさせなかった。逆に言うと、重厚にできそうな物語があっさり終わってしまったという物足りなさもあるにはあるんだけど。

本作はミュージカル形式ではなくて、場面転換の際に挿入歌としてフィル・コリンズ作の曲が流れるという形なんだけど、この曲が雄大な自然の描写と重厚なテーマにマッチしていて良かった。
キナイの身にある転換が訪れると同時に画面幅が広がるという演出も、キナイの目線の変化が分かりやすく描写されていて、シンプルながら巧いなと思った。

一方で、やっぱり全体的な地味さは否めなくて、デフォルメ抑え目なキャラ造形にリアルな背景描写、感傷的でないさっぱりとした展開など、ディズニーアニメらしい華々しさには欠けるので、他の有名作品に比べると埋もれてしまうのもやむなしかなという感じ。ただ、そのストイックなつくりが個人的には結構気に入った。
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