April01

ブロークバック・マウンテンのApril01のレビュー・感想・評価

5.0
遠景でショットして人物を配置するという絵画のようなカットが印象的。
登場人物に無駄がなく、それぞれに意味があり、すべての人物に複雑さがある。
愛しぬく関係、幸せだったと思えるはっきりした場所と時間があったことが羨ましい。

ジャックの実家の描き方が素晴らしい。あの質素な部屋で過ごし育ったんだという何とも表現できない胸にズシンとくる感じ。そして肝心のあの場面もそうだけど、むしろジャック父と母、二人の表面的な態度と言葉、その裏にある気持ちを慮ると本当に深い。

アルマの苦悩はわかりやすく描かれている。一方電話越しに真実を知ったであろうラリーンの一瞬の表情が素晴らしく、短いながらジャックの妻としての苦悩を観る者に想像させる描き方をしているのが余計に切なくて。
イニスの恋人キャシー、イニスの娘、あの牧場主も、ついでにラリーンの両親までも、みんなそれぞれの立場と気持ちがあって生きているということが感じられ、観る側の想像力でどんどん広がっていく感じ。

同性愛が大タブーだった時代背景、ワイオミング州ブロークバックマウンテンの大自然、羊たち、テキサスのカウボーイ、貧困、階級差、結婚、子供、色んなキーワードがあるけれど、20年という月日を経て・・というのがこの物語の一番大きな切ない要素になっていると思う。それが個人にとっての永遠に・・という言葉につながるところが心を刺されて苦しい。

In Loving Memory of Geraldine Peroni
April01

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