ギズモX

レイダース/失われたアーク《聖櫃》のギズモXのレビュー・感想・評価

4.8
何度見ても面白い。
冒険娯楽大作『インディジョーンズ』シリーズの記念すべき第一作目。
我らがインディジョーンズが、十戒を納めた箱、失われたアークに秘められた力を巡ってナチスと激しい争奪戦を繰り広げるストーリー。

さて、まずこの映画を語るにあたって、あることに触れなくてはならない。
それは物語の要となるアークについてだ。
僕が本作を最初に見たのは子供の頃だが、その時両親に
「アークって契約の箱のことだよね」
「契約の箱って神様の言われた通りに取り扱わないと死んじゃうんだよね」
「なんで博士や他の人達は大丈夫なの?」
と不思議になって聞いたことがある。
そう、実はこの映画、アークの取り扱いが非常に雑なのだ。

契約の箱は、本来ならイスラエル十二氏族のレビ人四人が、箱の四隅に立って箱に付いている木のさおを肩に持ちながら運ばなくてはならなく、絶対にその他の手段を用いてはならない。
ロープに括りつけて持ち上げたり、何かに載せて運ぶなんてもってのほか。
旧約聖書では、契約の箱を牛車に乗せて運ぶ途中で、衝撃で箱が落ちそうになり、人が支えようとして箱に直に触れたら、神の怒りが降り注いで死んだと記されている。[第一歴代誌13章]
契約の箱はユダヤ民族の根幹を成す歴史的遺産であると同時に、神の教えを固く守れという神と人の関係性を表す聖遺物でもあるんですね。
劇中では、契約の箱を船に載せて運んでいたら木箱が焼けるというシーンがありましたが、あれはそもそも何かに載せて運んではいけないからああいうことが起きているんですよ。

いや、これは映画だろ、お前は何言っているんだ?と不思議がる人もいると思うが、このことは契約の箱の性質を知るにおいて絶対に避けては通れない話で、ジョーンズ博士にしかりナチスにしかりスピルバーグにしかり、全員が知っておかないとおかしい部分だ。

彼らは確信犯だ。
自分が追っているもの、していることを十分に理解しておきながら、守れと言われた十戒を平気で破っている。
彼らにとって契約の箱は未知の力を生み出す装置でしかなく、そういう類いのものは非科学的な迷信でしかないからだ。
そういった何でもコントロールできるという人の思い上がりがクライマックスに繋がってくる訳なのだが。

この映画はファミリー映画というにはあまりにもグロテスクな描写が連発する。
人が串刺しになったり、人が溶けたり、人の頭が爆発したり、etc.etc.
それは彼らが人が触れてはならぬ領域に足を踏み入れていることの表れだ。
その領域にあえて挑み、最後の一線で踏みとどまるそのスリル。
それこそが娯楽の本質なのだろう。
改めて見るとそんなことを思わされる作品だ。

「何も分かっちゃいないんだ」
「私はあなたが分かった」
ギズモX

ギズモX