note

レイダース/失われたアーク《聖櫃》のnoteのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

第2次世界大戦前夜の1936年を舞台に、旧約聖書に記されている十戒が刻まれた石板が収められ、手にした者には不思議な力が宿るという神秘の伝説に包まれた契約の箱(=聖櫃)を巡って、ヒトラーの命を受けたナチスドイツとアメリカの世界的考古学者インディ・ジョーンズが争奪戦を展開する冒険活劇。

ジョージ・ルーカスとスティーブン・スピルバーグの天才2人が初タッグを組んだ作品。
重苦しいアメリカン・ニューシネマが席巻していた当時の映画界に胸のすく娯楽の「連続活劇」を復活させた。

痛快なアクション、ギャグ、サスペンス、そしてロマンスまで娯楽映画の要素がてんこ盛り。
冒頭の洞窟で大玉が迫り来る見せ場からハラハラしっぱなし。
助かったと思ったらまたピンチが訪れる演出の緩急のつけ方と見せ場の構成が素晴らしい。

アクションにおける生身のスタントの迫力は、今も安っぽさを感じさせない。
特に終盤のカーチェイスは永遠に記憶されるべきスタントだ。
敵との格闘でトラックの前部から転落しかけるインディは走行するトラックの下を潜り抜け生還する。
西部劇の名作「駅馬車」の有名なスタントへのオマージュだが、この作品以降、車にしがみつくスタントがどれだけ増えたことか。
CG技術がまだ未発達の時代だからでこその作り込まれたセットも圧巻。
アカデミー賞で視覚効果、編集、美術、音響賞を受賞したのも納得。

この作品以降、様々な亜流が製作され、また時代と共に価値観が変わったたために、今見ると少々難のあるシーンもある。

例えば、曲刀を持って挑んできた敵に、インディが鞭で戦うかと思いきや、あっさり銃で撃ち殺してしまうギャグは子どもの頃は笑えたが、今の御時世では「人の死で笑いを取るなんて!」と怒り狂う人が居るかもしれない。
しかし、逆説的に銃の怖さと無粋さを今も教えてくれる。

ギャグに限らずグロテスクな描写も多い。
遺跡に残る亡者の骸骨、大量の蛇などとても気持ち悪い。
私の場合は、ラストにアークの力が発動し、ナチスが溶けてしまうシーンが初めて見た子どもの頃はトラウマものだった。
しかし、悪者は悲惨な最期を遂げるのだということを、子どもの私にしっかりと教えてくれた。

少なからずオカルト(古代の霊的な神秘の力)をテーマにしているので怖いシーンがあるのは当然だが、少々悪趣味とも言えるグロテスクな描写はこのシリーズの特徴。
これも神の領域に踏み込むな、という教えなのだろう。

また、あれだけ苦労して手に入れた聖櫃が、広大な倉庫に仕舞われて二度と陽の目を見ないよう封印されてしまうというラストカットは、ただの娯楽作品で終わらず、皮肉と言うか、教訓めいたモノがあって良い。

題名の「レイダース」のレイダーとは、侵入者、侵略者という意味。
神の領域に踏み込む侵入者という意味では、神の力を悪用しようとするナチスも、知的好奇心で行動するインディも同レベル。
シリーズ最初の本作ではインディはナチスから世界を救おうとして行動した「勧善懲悪」のヒーローではない。
ナチスもインディも神の視点から俯瞰して見れば実は「墓荒らし」なのである。

現在では「エッ?」と思える難のあるシーンに、実は教訓や人間の愚かさを感じられるのも本作の良さなのである。
note

note