このレビューはネタバレを含みます
当時のルーマニアでの政策を理解していることが前提。
カビツァの強烈なキャラクターが物語全体を牽引していく。しかしそれ自体はどこか現実じみている。それを見捨てない主人公の献身具合のほうがよっぽどフィクションじみているとすら感じる。自身がそうなったときのことを考えてという行動原理を別ブログで見てなるほどなと。
感想の書きづらさはこれが社会に対する問題提起であり、その内容が明白だからだろう。
単調なカメラワークの割に時間が過ぎるのは非常に早く感じた。特に闇医者が来てから去っていくまでの一部始終は没入感が高かった。それはつまり物語全体がひとつの主題に向かって真っすぐ突き進んでいくスピード感にうまく乗せられた形なのだろう。しかしまあ、十二人の怒れる男を見たときに感じたのと同じで、テーマが明確な以上、折に触れて何度も振り返るような映画ではない。