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Mのefnのレビュー・感想・評価

M(1931年製作の映画)
3.8
 ピーターローレの目がすごい。五十人は下らないであろう群衆の視線とぶつかってもまったく負けていない。暗殺者の家の半眼も良かったし、この人は目線を送るだけで人の心に残る映画的な才を持っている。
 冒頭の振り子時計の音から犠牲になる子供がボールを弾く音にマッチさせ、そのままローレ(ポスター)と顔合わせさせる演出もかっこよかった。
 無能な刑事の代わりに民衆が犯人をあぶり出して警察が手柄を横取りする、という構図はひねくれていて如何にもラングらしい。裁判自体はあからさまだが、盲目の風船売が目を剥いたローレの肩を揺さぶるなど俳優の性格込の演出があるから画面は申し分ない。
 サイコサスペンスの古典として紹介されがちな作品だけど、どちらかといえば社会派で、しかもラング流の逆説もはいっているから扱いが難しい。妙にメタな視点を気にしているあたり90年代ハリウッドを思い出すね。
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