yukihiro084

ディナーラッシュのyukihiro084のレビュー・感想・評価

ディナーラッシュ(2000年製作の映画)
4.3
昔、映画館の支配人さんに、
映画業界で働くにはどうしたらいいか?
聞いたら、
『映画が好きなら、趣味のままがいい。
全てが全て、面白い訳ではない。
ほとんどは、どうしようもなく
つまらない作品なんだよ。』と。
それでも好きでい続けられる気持ちや
覚悟がいるんだよ、と。

普段の生活の中で、映画って
どういう存在か、考える。
僕はなるべく(普段着感覚)を
気をつけている。
雑に扱える着慣れたパーカーを羽織って、
近所の公園に行くような感覚。
気負わず、考え過ぎず。特別視しない。
作品を面白くしたり、つまらなくしているのは、
作品なのか、それとも自分なのか、

まだ、結論は出ていない。

(ディナーラッシュ)
当時、六本木で働いていて、
会社帰りに(ふらっ)と行った。
単館で、確か会社から近かったと思う。
ふらっと。気負うことなく。

ニューヨークで人気のレストランの
一夜の物語。オーナー、シェフであり、
オーナーの息子、副シェフ、いろんな客、
いい客、悪い客、混み合うフロア、殺人事件、
戦場のような厨房を描く、群像劇。
キャラクターが素晴らしく、ラストも最高だった。

六本木が、六本木ヒルズが出来る前、
夜明け前。まだファミリーやカップルが
来るような街になる直前。
外国人同士が、246をはさんで
大きな声で『ホワッツアップ!!!』と
普通に叫んでいた頃の夜の六本木は、
どちらかと言うと、健全な街ではなかった。
たけど、何でもありで、底が見えなくて、
何が飛びて来るかわからない楽しさが
あって、いろんな人がいて、
夜が長くて、美味しい店が多かった。
この作品の持つ空気感とよく似ていた。

名優ダニー・アイエロが出ているが
知名度がある俳優はほとんどいない。
話的にずば抜けて面白いかと言われれば、
そこまでじゃないかもしれない。

でも、例えば、クタクタのパーカーを
羽織り、気楽に、近所の飲み屋に行って、
顔見知りから聞かされた『面白い話』
だとしたら、これほど面白い作品はないよ。
yukihiro084

yukihiro084