回想シーンでご飯3杯いける

8 1/2の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

8 1/2(1963年製作の映画)
3.3
アカデミー国際長編映画賞を4回受賞という記録を持つイタリアの映画監督、フェデリコ・フェリーニによる1963年の作品。本作もアカデミーで外国語映画賞、そして衣裳デザイン賞を獲得している。

彼の作品を観るのはこれが初めてなのだが、冒頭のバス車窓シーンで「あ、これが元ネタなのか!」と分かってしまうぐらい、様々な映画でオマージュされている事を把握する。映像の魔術師とも呼ばれる彼の作風は、様々な作家に影響を与えているのだそうだ。

本作は、スランプに陥ったイケメン映画監督と、彼を囲む女性の関係を描いた作品。基本的には新作の制作に向けた流れなのだが、夢の中の話や子供時代の回想が挿入される等、時系列がかなり複雑な構成になっている。

本作が公開された1960年代に於いては、このように凝った技法は珍しく、映画マニアを強く刺激したと思われるが、今の目線で見ると、登場する女性像が男目線で作られている事等、当時の映画業界のマイナス面を感じてしまう部分も多々あり。

女性を支配しているようで、実は女性に依存している主人公。映画作りの難しさを描いているようで、結局、フェデリコ・フェリーニ個人を投影した主人公の視点でしかなく、自分が好きで仕方ない人だったんだろうなぁと。この作風は、庵野秀明に通じる部分がある。