カラン

ひかりのまちのカランのレビュー・感想・評価

ひかりのまち(1999年製作の映画)
5.0
こんな映画をもし撮れたら、自分だったらもうおしまいだな。(^^)



かなりフィルムグレインが強い。DVDで視聴したがDVDのフォーカスも甘いのだろうか。そこにブローアップしたような16mmのハンディーの映像が重なってくる。日中の曇り空の中に顔の輪郭が白く空と同化しているローアングルの歩行ショットが素敵。『恋する惑星』的な街の灯が煌めく線になる夜の低速度撮影も。解像度の競い合いみたいなのから遠く離れたところで撮影が行われている。

父と母。娘3人に末っ子の弟。ロンドンの何考えているか分からない700万人(*)に囲まれて密集して生きていると、息は詰まるし、うるさいし、うまく説明できない。だから身勝手だし、暴力的だし。その孤独で殺伐とした大都市を撮影し録音しながら、人と人とを結びつける出来事が到来するかと。
(*)1991〜2001年

『ブエノスアイレス恋愛事情』(2011)は出逢いようがない2人が出逢ってYouTubeに2人の動画をアップして映画を終わらせていた。出逢いの展開は似ているけれど、まったく違うわな。あっちは特別なものにしたいからYouTubeに上げるわけ。こっちは観衆も作り手も、誰も特別扱いしていないし、人物たちも歩きながらつまづいて笑っている。あっちは不思議の国に入りたい2人。こっちは不思議の国で出逢った2人。大都会をワンダーランドに変えたのは本作ってこと。

マイケル・ナイマンの音楽は、シークエンスに対して一体感はそんなにない。同録で録った環境音を再現しながらナイマンのオケが乗ってくるのだけれど、映画を観終わると交響曲を一作全部聴いたくらいの満足度で、終わってみると全体的に映画と合致している感じ。

5.1chマルチチャンネルサラウンドで視聴した。素晴らしい。
カラン

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