茶一郎

激動の昭和史 沖縄決戦の茶一郎のレビュー・感想・評価

激動の昭和史 沖縄決戦(1971年製作の映画)
4.5
『軍「沖縄は本土のためにある」』
 
 アメリカが日本に迫る。軍は県全体を大きな航空母艦とする計画を立てた。
 もし負けることがあれば、という前置きで『そのときは全県民、軍と共に玉砕して頂きたい』と悲痛な懇願から一変して、画面に映るのは沖縄の美しい海。
そして、この海が血の色に染まることになってしまった。

鑑賞していると、画面から伝わる命懸けの必死さに自然と背筋がピンッと伸びる。
スペクタルを目玉とした一連の『東宝八・一五シリーズ』の一作にして、まさにタイトル通りの激動、『激重』な一本であり、庵野秀明監督が敬愛しているという作品である。
テンポの早い展開、超が3個ほど付く『会議合戦』、不謹慎ながらも面白い冒頭と、地獄を見ているかと目を疑う自決の様子。
鑑賞後に残る胃もたれのような感覚と、右も左も関係ないただそこにある命の尊さが目に焼きついた。
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 沖縄県と本土、総攻撃をしようとする参謀と一方の持久戦派、変事においてはたとえ味方であっても敵になってしまう。そこでのテンポの良い『会議合戦』:『話し合い』という戦争がこれまた面白いこと。
本土の指揮官が『沖縄は本土のためにある』などと言い、まさにその言葉の通り、軍と県民が一秒でもアメリカを本土に近づけまいと必死になるのです。恐ろしくも尊い。

 広がった大風呂敷の上で、一人たりとも欠けてはいけないと思えるキャラクターたち。描きこみの深さと、この作品の内側に広がる彼ら一人一人の人生が感じられました。
濃厚になる敗戦色、虐殺とも見えるアメリカ軍の攻撃、自決、切腹、集団自決。そうして、その人生と命が一つ一つ消えゆく地獄の中、生きること・生かすことの尊さが光ります。

 文字通り躍り狂う老婆と、こちらも狂ったように動くカメラ、これに見る戦争は『地獄』と言うしかない。
茶一郎

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