Kogarath

ベニスに死すのKogarathのレビュー・感想・評価

ベニスに死す(1971年製作の映画)
4.6
「ミッドサマー」で37年ぶりにスクリーンに復帰したことでも話題になったビョルン・アンドレセンの超絶美少年ぶりにひたすら目を奪われる名作。若き日のディカプリオに勝るとも劣らない。この宝石のような美しさをフィルムに焼き付けただけでも大きな価値があると思う。

対する老作曲家役のダーク・ボガード、自身とは正反対の美少年への狂おしいほどの恋慕を抑えきれない姿はもはや乙女。
一人の部屋で思い悩む仕草、荷物の手違いでベニスに残らざるをえない時の隠せない嬉しさ、夢の中でタージオに触れるときの切ない手の震え…どれをとっても名演。最後まで二人が言葉を交わさないのもいい。もし数十年後に自分が老いてから観たら、思いっきり感情移入してしまいそうだ。

夜明けの暗い海をゆっくり汽船が進んでいく冒頭と、光が乱反射する浜辺にタージオのシルエットが浮かぶラストの美しすぎる対比には、グスタフと共に天に召されそうになる。マーラー交響曲の相乗効果も抜群だ。

そんな物語の影でじわじわ進行していく感染症。
経済のため、街ぐるみで隠蔽している様子は2020年コロナ禍のいま観ても恐ろしいものがある。
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