LalaーMukuーMerry

1000年刻みの日時計 牧野村物語のLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

4.0
思いっきり変な映画だった。Filmarksスコアが高かったのでレンタルしたのだが、レビュー数が39しかなかったとは!(気づくのが遅い) 
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山形県牧野村(現在の上山市牧野)で監督(小川紳介)らが13年に渡って(1974~87年=昭和49~62)続けた米作りを描いた農業ドキュメンタリーであり、村の歴史・伝承・出来事をインタビューやドラマ仕立てにまとめた作品でもある。こういうことに興味ある人にはとても面白いし、今となっては40年近く前の農村の様子の記録として貴重でもある。
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山形の方言が全開でほとんど聞き取れませんが、字幕つきなので安心です(笑)。特にラストで、おばあちゃんがとめどなく話し続ける様子とか、エンドロールにかえて登場人物(本物の村人たち)が行進しながら自分の名前を順番に連呼する演出とか、なんだか微笑ましい。
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<米つくり農業パート>
・牧野村は蔵王山の西に位置し、冬は深い雪に覆われる。温暖化が進んだ今ではあまりないのかもしれないが、真夏に最低気温が15℃以下まで下がると稲の成長に悪影響が出る。田植えから40日後頃(7月頃)に幼穂が出て減数分裂が始まり花粉ができるのだが、この頃に気温が低いと減数分裂が進まなくて不授精となるらしい。幼穂の中で花粉の減数分裂を確認するためにプレパラートを作って顕微鏡で見る様子とか、まるで理科の教育番組。

・水田の中で反収(たんしゅう=1反(約10a)当りの収穫量)が良いところと悪いところがある。その分布状態を調べ、悪いところでは水が一年中引かず沼地状になっていて、そこの稲は根腐れ状態になっていることが分かった。なぜこんなことになるのだろう? 地下水の水位が場所でこんなに違うのだろうか? 地下水の水位を実際に測定し(こうやって調べるのか!)データをグラフで図示しながら本当の原因を探り当てて解決した話は、まるで米作り農業の実践教育番組。
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<歴史・伝承・出来事パート>
・河岸段丘の桑畑で見つけた縄文時代の遺跡の発掘の様子
見学に来て発掘の指導を始めた考古学者の先生の雰囲気が朴訥で、夢見るようでとても良い

・1000年前に作られたという用水路にまつわる伝説
とても神秘的で柳田邦夫の遠野物語のよう

・江戸時代、延享の百姓一揆の顛末
悪徳代官に対し、義憤にかられて立ち上がった村の庄屋の悲劇。有名俳優陣を起用して緊張感漂う格調高い時代劇はまるで歌舞伎のよう。

・桑畑の中から道祖神(男根の石像)を掘りだした○○さんのお話
わたし的にはこれが一番面白かったです。私の故郷の近くでも昭和の終わり頃、畑から首のないお地蔵さんが掘り出されて、今では一大観光スポットになっているのですが、それとはずいぶん違った展開で、こっちの方がずっと好きですね。
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監督(小川紳介)は、三里塚闘争(成田空港建設に反対する闘争)のドキュメンタリー映画を作り続けた人だということを初めて知った。(この事に関連して書くと長くなってしまいそうだから、いつか機会があればその時に・・・)
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なかなか興味深い内容だったが、222分はさすがに長い(笑)。
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フィルマークスコアは作品を見るか見ないか決める時の重要な要素だけれど、レビュー数が100以下の時はそもそもレンタルに対応してないことが多い。レンタル対応とわかって飛びつくと、ややマニアックというか専門的な人だけが見るような作品で、クセが強い!。(でも大当たりの場合もあるから)見るか見ないかちょっと迷いますね。これはそういう作品です。