コーカサス

黄昏のコーカサスのレビュー・感想・評価

黄昏(1951年製作の映画)
4.5
墜ちていく男。

田舎からシカゴへ働きに出たキャリー(ジョーンズ)は、ある日訪れた高級レストランの支配人ジョージ(オリヴィエ)と出会い、互いに惹かれあう。
キャリーは仕事に困っていたところを助けてくれた気のいい男チャーリー (アルバート)との生活を捨て、ジョージと生きる選択を、一方妻子持ちのジョージは妻に離婚を切り出すも財産欲しさに拒否され、やむなくふたりは駆け落ちをするが、運命の歯車はそこから徐々に狂い始めていく。

「墜ちていく男を描いたらフランス映画に勝るものはない」
そんな勝手な思いは完全に覆された。
“紳士”オリヴィエのどん底まで墜ちていく姿が痛ましい。
そして何より特筆すべきは、美と醜、富と貧、罪と功、成と敗、情と意…といった人生における対の全てがここに表現されているということ。

コンロの火を消す→点ける→消す…。
何の台詞もなく、この一連の動作のみのラストシーンは、長い映画史に残る《隠れた名ラスト》と云っていいだろう。

110 2020