ひでやん

柳と風のひでやんのレビュー・感想・評価

柳と風(1999年製作の映画)
4.1
学校のガラスを割ってしまった少年の奮闘を描く。

脚本を執筆したアッバス・キアロスタミは本作でメガホンを取らなかったが、他の作品に通ずるものがあった。

雨に喜ぶ転校生とガラスを割った少年の冒険譚かと思いきや、2人の旅路は風の中で終わり、独りになった少年に様々な困難が続く。

例えるならRPGの試練。村を救うため洞窟へ行くと扉が開かず、その鍵を探しに塔へ登ると迷路に迷う。そんな試練を少年に与え、時間制限まである。

小さな子供がガラスを抱える姿を心配しながら見守るしかないが、その一歩先には不安しかない。

雨ニモマケズ風ニモマケズ、小さな体で歩みを進める姿は、まるで今にも折れてしまいそうな柳のようだ。

大は小を兼ねるという教訓と、残酷な絶望を少年に与えた後、ラスト・チャンスを残すキアロスタミの優しさがとても好きだ。

時折ロングショットで映す景色と、夕暮れ空を背景にしたラストのシルエットが美しかった。
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