ほーりー

怪獣ゴルゴのほーりーのレビュー・感想・評価

怪獣ゴルゴ(1959年製作の映画)
3.9
日活の『大巨獣ガッパ』の元ネタとなったことでも知られるイギリス製特撮映画『怪獣ゴルゴ』。

海外では珍しい着ぐるみの怪獣が登場する作品である。

アイルランド沖で作業中のサルベージ船のすぐ近くで突如海底火山が噴火する。沈没は免れたものの船を修理するために乗組員たちは近くの島の漁港に立ち寄る。

その晩、噴火の影響で目覚めた太古の怪獣が出現し港は大混乱となる。乗組員と島民たちは協力して見事怪獣の捕獲に成功する。

怪獣捕獲のニュースはたちまち全世界に配信され、早速、アイルランドの大学から研究者がやってくる。

貴重な研究材料として譲渡するように要請を受けた乗組員たちだったが、実は裏でロンドンのサーカス興行主から高額での取引を持ち掛けられていて、欲にくらんだ彼らは怪獣をロンドンに運び入れてしまう。

しかし彼らはまだ知らなかった。彼らが運んだ怪獣はまだ子どもであり、この怪獣には親がいるということを……。

ちょっと怪獣のデザインが微妙なのとストーリーが単純なのが難だが、冒頭の海底火山の噴火シーンやクライマックスのロンドン襲撃シーンなど、日本の円谷特撮に決して引けを取らない見事な画になっている。

監督のユージン・ルーリーは世界初の放射能怪獣映画『原子怪獣現る』でデビューしたお人だが、確実に『原子怪獣~』の頃より演出力は高くなっている。

恐らくだけど相当『ゴジラ』を意識しているように思う。

特に顕著なのがロンドン襲撃シーンでの逃げ惑う群衆の描き方で、『原子怪獣~』ではどことなく走り方など緊張感がないのだが、本作では群衆がパニック状態で逃げ惑う様子が見事に表現できている。

怪獣と群衆を合成することによって緊迫感を盛り上げているのだが、これは『ゴジラ』の東京襲撃シーンを彷彿させる。

親ゴルゴがビックベンを破壊する場面も、バックに燃えさかる炎や煙を出しているのも、ゴジラの国会議事堂破壊シーンを意識しているように思う。ゴルゴの体重で地下鉄に土砂が流れ込むのも『ゴジラの逆襲』に似ている。

そして『ゴジラ』にもなかったシーンも本作では果敢に挑戦している。

ゴルゴが破壊したロンドンブリッジから人が転落するのを合成で撮影したり、遊園地にて戦闘機がゴルゴを攻撃するシーンも操縦士視点で撮影したりと沢山の工夫がこらされている。

あと細かいところだが、親ゴルゴが遠く離れた子供の居場所がわかったのも、普通ならテレパシーとかなんか適当な理由をつけそうなところである。

しかし本作では航行中に子ゴルゴの肌が乾燥しないように海水をかけ続けたせいで臭いが海中を漂っていたからとそれらしい理由づけしているところも上手かった。

最後に、この映画は本国イギリスよりも九ヶ月以上早く日本で公開されている(IMDBによると)。この点でも相当日本のマーケットを意識していたように思う。

■映画 DATA==========================
監督:ユージン・ルーリー
脚本:ジョン・ローリング/ダニエル・ハイアット
製作:ウィルフレッド・イーデス
音楽:アンジェロ・F・ラバニーノ
撮影:フレディ・ヤング
公開:1961年10月27日(英)/1961年1月10日(日)
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