鋼鉄隊長

ガンマン大連合の鋼鉄隊長のレビュー・感想・評価

ガンマン大連合(1970年製作の映画)
4.5
BS放送にて鑑賞。

【あらすじ】
メキシコ革命の真っ只中。スウェーデン人の武器商人ヨドラフ(通称ペンギン)は、モンゴ将軍との商談に訪れる。そんな中、ひょんなことから金庫のカギを開けるために、モンゴ将軍の副官バスコと共に行動することとなる…。

 マカロニ・ウエスタンに日本を見た。そもそもマカロニ・ウエスタンとは、黒澤明の『用心棒』をパクった『荒野の用心棒』からもわかるように、日本映画(特に黒澤映画)の雰囲気を継承した作品が多い。そして、今回もその例に漏れない。
 殺っちまおう 殺っちまおう 同志たちよ♪
 物騒な歌詞を陽気に歌ったテーマ曲が冒頭に挿入され、いきなり物語に釘付けに。この物々しさとお茶目さが混じった空気が実に黒澤映画っぽい。ハヤブサを使う義手の殺し屋ジョンの濃いキャラクターにも、『用心棒』で仲代達矢が演じた卯之助のようなクールさを感じた。
 そして笑いのセンスが日本に近い。町一番の怪力将校が一発殴られるだけで簡単にのびるシーンは、(日本映画ではないが)『カンフーハッスル』で頭に爆竹を食らったギャングの幹部が、一撃で蹴飛ばされる場面を彷彿とさせる。果てにはバナナの皮ですっ転ぶギャグまでも。この古典ギャグは万国共通だったのか…。また、この作品は、拷問シーンにコメディ要素を融合させるのが素晴らしく上手い。ペンギンが縛り首にあう場面では、苦しむペンギンの必死さとバスコの茶化した態度の対比が良い。特に印象深いシーンである、岩に仰向けで縛り付けたバスコの股間にカゴを被せて、その中に飢えたモグラを放り込むという拷問は、文字に起こせば中々恐ろしい。しかしバスコの痛いのか、こそばゆいのか分からない情けない絶叫が荒野に響き渡ることで、娯楽シーンへと様変わりする。カッコいい男が泣きべそかく姿が、ここまで笑えるとは。その上敵も味方も、バスコの悲痛な叫びを無視して話し続けるのがまた面白い。
 その一方で、銃撃戦は抜群にカッコいい!向かい合った男たちが静かに銃に手を伸ばす。そこから静寂が破れる瞬間こそ、銃撃戦の醍醐味だろう。終盤でのバスコ対ペンギンの対決は特に良い。やはりマカロニ・ウエスタンは盛り上げ方が非常に上手い。
 「ぶっ殺そうぜ、同志たちよ!」
 ラストにて、そう叫ぶペンギンの爽やかな笑顔が気持ち良い。スッキリした気分が味わえる素晴らしい作品だった。
鋼鉄隊長

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