茶一郎

仁義なき戦い 広島死闘篇の茶一郎のレビュー・感想・評価

仁義なき戦い 広島死闘篇(1973年製作の映画)
4.3
【短】戦争で死ねなかった若者の悲劇を描く本作『広島死闘編』は『仁義なき』シリーズとしては番外編ですが、これがまた大傑作。

 物語は大友連合会と村岡組との抗争を背景に、前半は『仁義なき戦い』と同じくヤク群像劇、そして徐々に本作の主人公である山中というヒットマンに焦点が当てられていきます。青春映画的要素が強かった前作と同じく、本作『広島死闘編』も山中という一人の若者の青春悲劇の様相が非常に強い作品でした。
 手に持ったピストルを指し「これが俺のゼロ戦」というセリフに顕著なように山中は特攻で死ねなかった、戦争に出遅れた若者の象徴。一方で山中と敵対する大友連合会・会長の息子である大友勝利は、戦後の自由に何の疑問を持たずに謳歌する山中との正反対の若者として描かれていきます。

 戦中の天皇のような自分が従う組長にただただ翻弄され、無意味な暴力に走っていく若者・山中。その壮絶すぎるラストは戦中の自決を想起し、心が揺さぶられました。
 何よりラストに映る「原爆ドーム」。若者の死によって暴力が伝播していく本作の物語は現実の戦争の悲劇とリンクし、この『広島死闘編』が実録やくざ映画というより反戦映画、暴力についての暴力映画に見えてきます。
茶一郎

茶一郎