シュトルム凸映画鑑賞記録用改め

バベルのシュトルム凸映画鑑賞記録用改めのレビュー・感想・評価

バベル(2006年製作の映画)
3.7
『バードマン』や『レヴェナント』のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作品。バベルというタイトルが全てを物語る。言葉による意志の不疎通と人間の愚かしい選択の数々。これは例えば、戦争を起こす人類が愚かしいといった大きなレベルの話では全くなく、まあ何とかなるだろうと高をくくって、何とかならない、人の運命を滅茶苦茶にしてしまうという卑近な愚かしさの話。その愚かしさをメキシコ、モロッコ、日本、アメリカそれぞれの文化にキチンと依存した文脈で描きながら、愚かしさ自体には人類共通の普遍性があるという。
そしてそういう愚かしさをくぐり抜けなければ、人は共通の理解を得られないという話でもある。
それって哀しい事だと思いますか?それとも愚かしさを経験しさえすれば、分かり合えるということは人類の希望だと思いますか?
日本パート。援交とかルーズソックスとかそういう当時の風俗を背景に聾者のヒロイン菊地凛子の寂しさを描く。言葉では伝わりきらないコミュニケーション。でも言葉がなければもっと疎外感を味わうというやり切れなさ。
モロッコパート。人跡まばらな家族単位での遊牧民の暮らし。刺激がなく、孤立した澱んだ暮らしの中に、持ち込まれる銃の存在。澱んでいても平穏な暮らしというのは確かにあったのだ。
メキシコパート。苦し紛れの選択肢、つかの間の喜び、行き当たりばったりの迷走。楽観論ではどうにもならないシビアな末路。
ブラッド・ピットとケイト・ブランシェット。被害者として描かれる二人も、実は他国の登場人物と似たり寄ったりの無責任さがある。家族を大切にするというアメリカ人も結構、子供を他人任せにしてるのよね。勿論、そういう油断を責める資格はこの世の誰にもないのだが。