ダイヤ仲買人とその愛人がそそのかされて世界のダイヤ流通を一手に担う組織の地下倉庫から数百万カラットのダイヤ原石を盗み出すというサスペンス。
邦題からすると、オードリーヘップバーン主演でワイラー監督が撮った「おしゃれ泥棒」に関係してそうだが、全く関係ない詐欺のようなタイトルの作品。といっても、この作品の原題は「11 Harrow house」で、有名な「おしゃれ泥棒」のそれは「How to Steal a Million」なので原題は全く違うタイトルなので、こういうタイトルにすれば間違えて観る奴が出てくるだろうという日本の配給会社の嫌らしい発想が伺える。パクリに思えてしまうこの映画も気の毒だが、どうしょうもない駄作なのには変わりがない。
舞台はロンドンの下町のハロウハウス街。ここに世界のダイヤ相場を牛耳る「組織」(恐らく、デビアスを意識している)の本拠地がある。この地下に膨大なダイヤ原石が眠っているのだが、主人公である若い仲買人チェーサーはこの組織から舐められていて、天品質のダイヤを高値でつかまされている。そんな彼に怪しい億万長者から巨大ダイヤを買うという依頼が来たので、組織を通して入手した原石を加工して素晴らしいダイヤに仕上げ届けようとするが、その途中で強盗に襲われて盗まれてしまった。加工賃だけ貰うはずの主人公は億万長者に金を返せ、さもなくば組織の地下倉庫からダイヤ原石を残らず盗めと脅迫され、愛人と二人で止むを得ず厳重な警備の地下倉庫からダイヤを盗もうと企てる。。。
ストーリーはありきたりなのだが、それ以上に退屈なのは、主人公の淡々としたナレーションが全編に亘って流れるのだ。主人公の生い立ちや組織から舐められていること、強奪ストーリー立案や実行シーンなどほぼ全てで常に冷めた口調で主人公の問わず語りのセリフが流れ続けるので白けてしまうのだ。大自然を紹介するネイチャー番組ならいざ知らず、サスペンス映画でなんでこういうスタイルにしたのかと謎に思えるくらいに盛り上がらないやり方だ。
また、盗む手口は安易だしそのきっかけもご都合主義丸出しの度がすぎる。主人公たちに犯行を強要した億万長者は犯罪者の用心棒を大勢抱えているのだから自身ですれば済むことだし、厳重な警備ということを散々紹介しておきながら、実行犯は結局内部の人と仲良くなって代わりにやってもらうなんて呆れてモノが言えない。どうしてこういう低レベルな設定で映画化しようと考えたのか不思議でならない。
結果、白けたまま映画が終ってしまい、最後は時間を無駄にした怒りさえ湧いてくる。
まあ、こんな映画だから「おしゃれ泥棒」にあやかって動員を増やそうとしたのだろうが、今の時代だったら「商標侵害違反」でクレームが付くと思う。