マヒロ

兵隊やくざのマヒロのレビュー・感想・評価

兵隊やくざ(1965年製作の映画)
4.0
第二次世界大戦中の満州の駐屯地に、元ヤクザものの新兵・大宮(勝新太郎)がやってくる。粗野で喧嘩っ早い大宮に皆が手を焼く中、戦争嫌いのインテリで、古参ながらも出世を拒み上等兵の位置にいる有田(田村高廣)は大宮の世話係を命じられ……というお話。

乱暴ものだが情に厚く慕った人にはとことん従う忠犬のような大宮と、基本平和主義だがいざという時は自分の身体を張っても筋を通そうとする有田はあっという間に意気投合し、固い絆で結ばれる。それは凸凹バディもの……を通り越してどこかブロマンスっぽさすら感じさせるほどで、ぶきっちょな大宮の性格をよく理解し利用しつつも、そんな大宮がほっとけない有田の様子が何ともいじらしい。

なんといっても今作は大宮を演じる勝新太郎の魅力に尽きるところがあって、旧体制でガチガチに凝り固まった軍隊において全く規則に縛られない異質なアウトローとして暴れまわる役がよく似合う。
荒くれものではあるんだけど、よく見ると顔つきはベイビーフェイスだし、風呂場で素っ裸になるシーンでは一人だけ軍人らしからぬ色白の肌にモッチリボディで、なんかデカイ赤ん坊みたいに見える時がある。この風呂場のシーンがまた凄くて、狭い浴場で十人くらいの素っ裸の男が組んず解れつの大乱闘スマッシュブラザーズを繰り広げるという胸焼けしそうなシーンで、裸のおっさんが暴れてる絵面の面白さと、何も身を守る防具がない状態での殴り合いというヒリヒリするような緊張感の奇妙な対比はあの『イースタン・プロミス』に先駆けている。最も、常にブラブラしていたあちらと比べて股間は巧みに隠されているが。

基本的に主人公ふたりは、体罰上等階級一番な軍隊のやり方に反発していて、偉そうな態度を取る気に食わんやつは上官でもなんでも有田の機転と大宮の頭脳でぶちのめしてしまうという、反体制的な一面も面白い。
フィクションだからこういう人たちがいてスカッと出来るが、気に食わない事があればすぐリンチ…みたいなやり方ががまかり通っているあたり、当時の軍ってのは本当に恐ろしい。戦争も嫌だしこういう体育会系なノリも大嫌いだし、本当にこの時代に産まれなくて良かった……。
と、なんか意図せず戦争反対な気持ちにもさせられる映画だった。案外深い映画なのかもしれない。

(2019.163)
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