タカシサトウ

冬の光のタカシサトウのネタバレレビュー・内容・結末

冬の光(1962年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

[ダメになっていく牧師]

 牧師トマス(グンナール・ビョルンストランド)は、信者ヨーナス(マックス・フォン・シドー)から相談され、生きる意味を問われると、逆に自分の悩みを訴えてしまい、ヨーナスを死に追いやってしまう。相談を受けるものが、不安が高い時に陥りがちなことではあるだろうが、何とも皮肉としか言いようのない展開だ。

 それにも関わらず、ヨーナスが自殺したことを気に病む様子もない。そして、“結婚して”と言い寄ってくるマルタ(イングリッド・チューリン)に、愛してない、と言いながら、心配になると付いて来て貰いたがる。

 牧師としての信頼も失い、信者が来なくなっても礼拝を続けようとする。何とも情けない限り。神の不在というテーマはある。しかし、神を信じられなくなってなって牧師としても、妻を亡くして生きる意味を失い人としても、ダメになっていく姿は、むしろ人間的かもしれない。(2018.10.4)

 あまりにも救いのない牧師の生き方だが、イングマール・ベルイマンの牧師の父に対する、皮肉と憎しみ。それが、神の不在となる。そして、自分自身も宗教から逃れられず、自分の投影としての牧師なんだろう(2021.2.20)。