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狗神の消費者のレビュー・感想・評価

狗神(2001年製作の映画)
3.3
・あらすじ
四国の山村、尾峰村にやってきた1人の男性
彼の名は奴田原晃、隣村の中学へと赴任してきた教師である
奴田原は村で出会った地元男性、土居誠二の案内を受けていると森の中で朦朧として気絶してしまう
目を覚ました場所は地元を牛耳る坊之宮一族の分家の娘、美希の和紙工房だった
その出会いをきっかけに2人の距離は近づいていきやがて恋仲になる
しかし美希には秘められた過去があり、それは彼女の家系に関係していた
坊之宮の分家は古くから狗神筋と呼ばれ、本家から蔑まれていたが狗神を怒らせれば食いつかれるという伝承があったのだ
更に彼女個人にもまた闇の深い過去があり、やがてそれは奴田原にも大きな関係がある事が判明していく
そうして伝承に関わる真実が徐々に明るみになっていくと共に村では奇妙な現象が人々を襲う様になり、それは美希を中心とした分家の面々への排斥へと発展し…
という村ホラー作品

・感想
閉鎖的な村に秘められた謎と因習、という題材自体は好きな物だしストーリーや真相も悪くなかった
ただ肝心の恐怖描写が坊之宮一族の本家と深い関わりを持ち、誠二の祖母である土居克子の怪死のシーン以外に見られず不完全燃焼なのは否めない

加えて美希の正体も背景が特に明かされる訳ではない事もあって突拍子のない物になってしまっていて十分に村の闇として活かしきれていなかったという印象
それは美希と彼女にだけ見える死んだ母、富枝の姿がオーバーラップするクライマックスの場面をもう少し不気味にするだけでもある程度は改善出来たと思うだけに残念

美希と隆直、そして奴田原晃の禁忌の関係にしてももう少しドロドロとした描き方が出来たんじゃないかと…
狗神筋の血がもたらした不死の魂と近親相姦というのが禁忌の真相な訳だけどワンシーンしか美希の正体を視覚的に描いた部分がなく、美希がずっと若い姿のままだったからいまいちタブー感が感じ取れないというか…
「シャイニング」でジャックが抱いた若い美女が醜い老女へと変貌する描写があったけどああいう演出があっただけでも大分違ったんじゃないかなぁ…

題材や設定は面白いのに活かしきれていない、という点も含めて同じく四国を舞台とした因習によって巻き起こされる恐怖を描いた作品である「死国」と被る部分があった
何ならちゃんとした心霊描写がない分、本作の方が劣るかも…

あとは終始、村人達の方言がキツいせいで聞き取りづらい台詞が多かったのも気になったかな…
限界集落を舞台にした作品だから仕方なくはあるんだけど…

名作に出来そうなポテンシャルが垣間見えるだけに残念な作品、というのが総合的な感想かな…
小説が原作らしいので多分そっちは面白いんだと思うけど
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