15人の名監督が「時間」をテーマに「10分間」という決められた枠の中で競作。「イデアの森」に8人、「人生のメビウス」に7人の監督を収めた贅沢なオムニバス。
「結婚は10分で決める」
監督アキ・カウリスマキ
結婚してシベリアで石油を掘ると決めた男は、女を連れて列車に乗る…。無表情の男、カティ・オウティネン、バンド演奏、色合い、いつもの世界が10分間にギュっと凝縮されていた。
「ライフライン」
監督ヴィクトル・エリセ
眠る母のとなりで血が滲む赤ん坊、外では洗濯、草刈り、靴磨きという日常があり、平穏と不穏をモノクロでオーバーラップさせる。ブランコ、かかし、時計などのワンシーン、ワンショットに引き込まれた。
「失われた一万年」
監督ヴェルナー・ヘルツォーク
アマゾンのジャングル奥地に住んでいた部族を追うドキュメンタリー。石器時代の暮らしをする部族が近代文明に触れて急速に進化しても、そこに生き生きとした姿はなく、誇らしげに語るのは昔話。進化とは、幸福とは何かを考えた。
「女優のブレイクタイム」
監督ジム・ジャームッシュ
トレーラーで10分の休憩時間を過ごす女優をモノクロで映す。クロエ・セヴィニー扮する女優が電話しながらスタッフのケアを受ける。特に何も起きないが好きな短編だった。忙しい女優の孤独を感じた。
「トローナからの12マイル」
監督ヴィム・ヴェンダース
謝ってドラッグを過剰摂取し、朦朧とする意識で病院へ向かう男の物語。「ロード」と「ロック」という持ち味を出しながら、「時間」と「距離」を巧みに使って心臓の鼓動と汗、焦燥感と幻覚を描く演出が楽しめた。
「ゴアVSブッシュ」
監督スパイク・リー
米大統領選で破れたゴアの敗因を描く。政治色100%の短編で、報道と実際の票差、勝利宣言と敗北宣言のタイミングなどを語るモノクロの映像がテンポ良く切り替わり、最後には「運」という皮肉な言葉が浮かんだ。
「夢幻百花」
監督チェン・カイコー
引越しの手伝いを依頼された運送屋が到着した場所は何もない荒地。家も家具もない場所で、ありもしない荷物を運ぶ姿は滑稽だったが、古き北京への郷愁にふける青年が切なく、かつてそこにあった家が浮かぶラストが美しかった。