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汚れた血の海のレビュー・感想・評価

汚れた血(1986年製作の映画)
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なにをもって、わたしか、きっと死んだってわからない。なにをもって、あなたか、なにをうしなっても手にいれてもあなたはあなただろう。声、手、目、くちびる、頬、背中、あなたに与えられたからだ、そこにわたしが知っているすべて。いつでも目の前にゆけるほどそばに、わたしはあなたを思い描ける。あなたの心は、あなたのゆびのあいだや深くたいらな胸に、ときおりそっと、息つぎをしにうかんでくる。あなたの死んでるみたいに静かだった眠りに、誰も居ない夜の街を築いた。大人は飽きずにわたしを哀れみ続け、あなたはその分だけわたしを慈しんでくれた、ふたりは生きているあいだに死に至るほどの愛をわずらうんだ。今夜は、清くて幸せな夢よりも、ずるくて苦しい夢のほうが見たい。わたしもあなたも、愛に生かされ、愛に殺されていくのだと、事実よりも真実が欲しい。あなたがいま、誰であろうとかまわない、あなたのためにいくらでも疾る、永遠を信じた一瞬のために、いくらでも愛を浪費するわ。
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