こたつむり

ニーチェの馬のこたつむりのレビュー・感想・評価

ニーチェの馬(2011年製作の映画)
2.5
★ どっどど どどうど どどうど どどう

世界の終わりの物語と言えば、派手で大袈裟。
そんな印象が先走りますが、本作はミニマム。
ビニル袋が空に舞うように、日常的な規模の物語。

ただ“風”だけは違います。
全てを吹き飛ばすように激しく、ごうごうと。
些末な感情など消し去るように、どうどうと。
常に吹き荒れているのです。

だから日常と非日常の対比はギリギリの線上。
右に落ちるのか、左に落ちるのか。
先行きが見えない“恐怖”が画面上を支配していました。

しかし、その“恐怖”が成り立つのは。
自ら一歩を踏み出して世界を覗き込めば…の話。
ただ目を開けているだけでは、冗長な映像に過ぎず、ひたすら眠気と戦う時間であるのは確実。

確かに現代人の価値観は“スピード”重視。
目まぐるしく変化する“経済”に振り回されているのです。しかし、それはひとつの軸にすぎず、視点を変えてみれば“遅々とした流れ”を至上とする価値観も存在することに気付きます。

それは、宗教と哲学の世界。
「そして光あれ」と言われた瞬間から始まり、子羊が封印を解き、天使がラッパを吹くまでの物語。帰結するのは闇。緩々と壊れていく様に、何を観るのか。それが重要なのです。

まあ、そんなわけで。
“時間の省略”という素晴らしい発明を捨てた物語。製作者の意図を掴んだ中盤以降は面白く感じましたが、そこまでは睡魔と闘ってばかりでした。でも、不思議なことに体感時間は短いのですよ。2時間半の作品ですが、もっと短く感じるのです。とても奇妙な感覚でした。

ただ、短気な人には向かない作品ですね。
暗闇の中で馬の耳がピクッと動くまで映像に変化がなかったり、窓に張り付いた木の葉が飛び散るまで同じ場面が続いたり…そんな冗長さにイライラしたのも事実。物語の内容も含めて、僕とは相性が悪い作品でした。

それにしても。
ジャガイモが食べたい。
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