Melko

歓楽通りのMelkoのレビュー・感想・評価

歓楽通り(2002年製作の映画)
3.6
期待していた内容とは違って、そうゆう意味で期待外れではあったけど、
忌み嫌われる 娼婦=がめつく、自分のことしか考えない
というイメージをカラッと覆してくれたことは好感が持てる。

娼婦の息子として生まれ、娼館で育った小男プチ・ルイ。
娼婦達の身の回りの世話、炊事洗濯をしながら育ち、いつしか、「運命の女性を一生お世話する」目標ができる。そこへ現れた運命の娼婦のマリオン。ある時は彼女の”影”となり支え、またある時は”太陽”となり彼女を鼓舞し導く。戦争終結による「娼館の閉鎖」、引き合わせたクズ彼氏、オーディション、良いことと悪いことが万華鏡のように目まぐるしくプチルイとマリオンに襲いかかる…

プチルイのバックボーンも、娼館という舞台も、導入部分を務め脇を固める娼婦達も、全て味付け程度。私としてはそこをメインに描いて欲しかった。メインはあくまで、マリオンの成功を願い支えるプチルイとマリオンの物語。でもそこも別に濃密に描かれるわけではなく、全てオシャレな音楽に乗せて軽やかに進んでいく。

フランス語ってホントに響きがオシャレ。間にいくつも挟まる歌謡曲が全て粋に聞こえる。

若く、世間知らずで退廃的な女。刹那的に生きる。だから間違いを犯しやすい。周りの女の先輩達が苦言を呈しても、恋に恋する気持ちは止められない。周りが見えない。このマリオンが、ブレードランナーの時の若かりしダリルハンナに似ていて、絶妙に可愛すぎない色気のある美女。肌が綺麗。最初から最後までずーっと「薄幸」を地で行く表情が印象的。

そんな彼女の一番近くにいて、男として踏み込もうと思えばいつでもそうできたプチルイの、血迷いそうになりながらも彼女を「一心同体」として受け入れる真心と奥深さ。彼女の恋路を嬉々として娼婦仲間に話すところが潔い。意外と頭に血が上りやすく、スッと手が出て喧嘩するところもギャップ萌え。
一心同体という言葉の重みと深さ。彼女が幸せになることが自分の幸せ。でも、それを一番近くで見なければならない切なさ。彼の幸せはホントにそれだったのか…
序盤で「わたしにはあなたがいる」とマリオンに言われた時の、「僕じゃダメだ」と言った清々しさは、彼の物事を一歩引いてみるところを表し、葛藤しながらも最後までマリオンの幸せを優先するところは、複雑な慈愛の心を感じる。ホントに奥深い人間だ。バックボーンがもっと知りたかったので、スピンオフとか見てみたいな…

クズ男のディミトリに関しては、「もう、早くそうしてよ」とわかりきった展開を望んで焦らされるプレイ。ラストはスッキリ。こうでなくちゃ。

他所の作品では底意地悪く描かれがちな娼婦達が、皆とても思いやりのあるキップのいい姉さん達なのが良かった。
自業自得な奴らのためにお金を出し合う気前の良さ。男に貢ぐために体を売りまくる仲間を心配する気持ち。娼婦同士の喧嘩のシーンがないのも良い。姉さん達みんな綺麗で健康的。
時代とともに閉鎖される娼館。「悪しき娼館を排除せよ!」と言われても、それしかできない女達は、同じことをするしかない。いつの時代も同じ。変わらぬ世の中。変わらぬ金持ち。

あっけない、見る者をポーンと置いてけぼりにするラストも、画面が味わい深い絵なので気にならなかった。
シャレオツな究極の献身愛。
Melko

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