海

廃市の海のレビュー・感想・評価

廃市(1984年製作の映画)
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そこに在る景色が消えそうにひずむ、そこに居ないあなたがふれられそうに映る。すこしだけ目をとじるとき、あの日のままのわたし、われしらず続けてきた儀式よ。となりにいるひとの、声の向こう側、閑寂な町の中の、うずまく時間の流れ。声ひとつも、ゆび一本も、あなたにしかない。呪いだけでわたしは祈れるか、犠牲だけであなたを慕えるか。もう朝は来なくとも、死んだ町にいようとも、そこで生きているあなたは美しかった。焦がれたわたしも、きっと。
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