シズヲ

ガルシアの首のシズヲのレビュー・感想・評価

ガルシアの首(1974年製作の映画)
3.7
「大地主が娘を妊娠させた男の首に100万ドルを懸ける」という強烈なプロローグに始まるペキンパー監督作。やっぱり暴力的な映像が目を引くけど、最初から最後まで愛の映画でもあるのが印象深い。

物語前半は言うなれば野暮ったい『ゲッタウェイ』的な雰囲気で、いまいち本題に入らないまま悠長な映像が続くのでピンと来ない。そのへんも含めて映画の筋を作っているのは解るけど、見ている最中は正直乗り切れなかった。しかし首の争奪戦が本格化する中盤からは一気に面白くなるし、スローモーションを駆使した乾いた銃撃戦のインパクトが相変わらず冴えまくる。終盤に近づくにつれてどんどん過激になり、ラストは畳み掛けるような「暴力」で終わらせるという虚しさにも心を掴まれる。

何より主演のウォーレン・オーツが良いんだよな。埃っぽくも男らしい顔立ちから漂う哀愁なんかが堪らない。中盤に取り返しのつかないことになって、もはや怒りだけに駆られるように泥臭く駆け回る姿も哀れで愛おしい。その怒りの大本もまた一人の女に対する不器用な愛というのが切ない。それにしてもペキンパー監督は男臭い作風ながらもハードボイルドには傾かず、繊細でメロドラマ的な要素が度々色濃く見られるので何だか面白い。
シズヲ

シズヲ