群青

機動警察パトレイバー2 the Movieの群青のレビュー・感想・評価

4.4
初めて確信犯という言葉が正しく使われてるのをみた。


現在日本では極めてきな臭い雰囲気になっている、ような気がする。自分たちがそうしようと思わなくても近所から煙が上がれば、備えておかなければならないのが国というものだろう。しかし万が一というのを備えれば備えるほど、疑心暗鬼になるところは日本という国がいかに平和だったのかを思い知らされる。


PKOで外国に派遣されていた自衛隊が反撃を許されず、されるがまま攻撃をされる所から始まる冒頭。
今作が製作された当時、自衛隊は湾岸戦争から始まる国際協力の要請により1992年にPKOが成立されたばかりだということを考慮するとこれほど皮肉を込めた始まりはない。というか現時点で見てもある意味タイムリーなのではないだろうか。

そこから始まるのは東京で戦闘が起きたらどうなるのかというもの。
実際は何も実害のようなものはない(ベイブリッジ爆破や数棟の施設破壊のみ)。しかし空気感だけなら戦争状態と言わんばかり。特に防空指揮管制システム、いわゆるバッジシステムへのハッキングからの幻の東京襲撃は、自分の中でのアニメ史史上最大のリアリティと緊迫感とエンタメの込められた最高のシークエンスと言える。戦闘という戦闘はないのに会話と音楽だけでこれだけ盛り上がるのは本当に素晴らしすぎる。

そして浮かび上がるのは、いやみんな少し考えればわかることなのだが、日本や他の先進国の平和というものが今もどこかで流れている血の上で成り立っていること。荒川はそれを不正義の平和という。しかし我らが最高の上司、後藤が返す。

そんなきな臭い平和でも、それを守るのが俺達の仕事さ。不正義の平和だろうと、正義の戦争より余程ましだ。

上記含めた中盤にある2人の会話は濃密であり今作の根幹となっている。

黒幕は幻の日本を襲撃することにより日本が幻の平和の上に成り立っていることを浮き彫りにさせた。この構図がゾクゾクするほど面白い。


自分はパトレイバーの他の作品を見てこなかったのでレイバーがほとんど出ないとか、主人公がおっさんになってるところとかはあまり気にならなかった。むしろ、後藤というキャラが動いて、そして一度だけ声を張り上げるあの場面とその他全編に渡る張り詰めた雰囲気でもう眼福を得てしまった。


しかし断っておくとセリフが多いし、淡々としてるし何よりロボバトルがほとんどない。なので人によっては、というか結構な人は退屈で難しくてわかんなかった、となるということを書いておく。

それでも個人的にこの作品はジャパニメーションの中でも最高峰の作品だと言える。最初に書いた通り、今日本はキナ臭い状況だと思う。なので今だからこそ、絶対に見るべきです。
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