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TATTOO「刺青」ありのmingoのレビュー・感想・評価

TATTOO「刺青」あり(1982年製作の映画)
4.2
テアトル新宿の「観ずに死ねるか!傑作絶望シネマ88」特集にて。茹でてない生のチキンラーメンをバリバリ食う名シーンがあることで有名な本作。

トークショーでは伊賀大介×主演の宇崎竜童、ヒロイン役「人類史上1番綺麗に唾を吐く女」(伊賀さんの紹介w)の高橋惠子。

まず血だらけの男が病院に運び込まれ、医者が身体の血を拭き取り、胸にあるTATTOOを確認し、「TATTOO!」と発したと同時に画面が止まり縮小。タイトルがバーンッとでる。今まで見た映画の中で1.2を争うタイトル出しの格好良さ。ぱねえ…

30歳までに何かデカいことをしてやると、銀行を襲撃するまでに至ったひとりの男の実話を基にしたピンク出身の高橋伴明監督作のドラマ。年齢という意味ではまさに今の自分とリンクする。トークショーでも皆さんおっしゃっていたが、70年代の若者はとにかく常に「何かやってやろう」て喧嘩腰が基本だったと。まさにその塊みたいなのがこの映画には表れている。「みんな殺気立ってた…」印象的な言葉だった。

何が1番凄いかって、 本作では犯行そのものを一切描かないという割り切りの良さ。主人公の人間像を浮き彫りにし、エモすぎる音楽とともに落ちて行く男の傍観に徹し、彼の環境と哀れに歪んだ情熱を爆発させる道程を描いていく。

哀れな男の哀しみやいらだちには「痛み」を感じる。正直この点数は痛みがわかる人にしか通じないだろう、しかしエンディングでかかる主人公宇崎竜童本人が歌う「ハッシャバイ・シーガル」は名曲すぎて観てる全員がエモさを感じることができるだろう。(本人はラストのお母ちゃんが骨壷持ってる中から聞こえてくるから微妙とは言ってはいたがw)

またカメオ出演で、彫り師泉谷しげる、古本屋の主人原田芳雄、電気店販売員に植木等、その他ポール牧、大杉蓮などのウルトラハイパー豪華さ。しかも助監督に周防正彦、プロデューサーに井筒和幸。宇崎竜童曰く「井筒さんは僕の中では監督ではない。最終日に制作費を1円の間違いもありません!と管理する名プロデューサーだ」と、、

それに親子愛、劣等感、虚栄、金、嫉妬、暴力、社会、ありとあらゆるテーマを内包しており、70年代の熱気と同時に様々な感情に忙しくなるのも良い映画であるひとつのポイントでもある気がする。

トークショーの裏話はここに書ききれないくらい沢山あるのだが、宇崎竜童さんはこの映画のために免許をとってボルボを購入したらしいw 車の乗り換えのときにガチャガチャやる演技があるのだが、初心者だからあれはガチで慣れてないだけらしいw

最後に、ヒロインの高橋惠子が出てくる前に付き合ってた女に蕎麦を投げつけるシーンがあるのですが、その蕎麦が女の右乳首にのっかるという空前のハプニングが画面に収められている時点ですでに大傑作でしょう。
この映画を通して、高橋伴明監督とヒロイン高橋惠子が結婚したこともエモさ爆発(宇崎竜童を通してBARで出演交渉の出会いから映画公開の6ヶ月のスピード結婚)。そんな熱い時代に生きたかった点も含め、伊賀大介さんがぶちあがるのもうなづける一本。
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