イスケ

新幹線大爆破のイスケのネタバレレビュー・内容・結末

新幹線大爆破(1975年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

健さんの弱点は、健さんが演じてると新幹線に爆弾を仕掛けるような犯人であっても、そっちに肩入れしてしまうところなんだよな。
警察よりも誠実に見えちゃうし、不器用だからしょうがないやんと許せてしまう。

妊婦をビンタする方が激ヤバに見えたわw 「昭和だから」で許されるんだっけ……


「ひかり109号に爆弾を仕掛けた?」

テッテー!テッテー!からの、
気持ち良さそうに日本を横断する新幹線を背景に、大きな赤文字でタイトルをドンと出すオープニングにもう心を掴まれる。

新幹線を並走させて器具を受け渡す名シーンも良かったし、何よりもクライマックスで健さんが狙撃隊に撃たれて飛行機が飛び立っていくシーンはアートで無常。ボニー&クライドよりも好き。


もう一人の健さんの宇津井健。
彼がまた役柄にぴったりとハマっていて素敵だった。本来は犯人役だったそうで。

「俺は1500人の命を見捨てたんだ。
 俺が停車を命じた。俺は人殺しだ。」

そうなんだよなぁ。
「良くやった」なんて言われるのはあくまでも結果論で、成功すればヒーロー、失敗して1500人の命を犠牲にしたら袋叩き。

あの時の決断に根拠なんて全くないのだから、コインの裏表で「俺は人殺しだ」と考えてしまうのは、あながち大袈裟でもないもの。

たった一度のことだけど、「人の命を預かる仕事に疲れた」と言って、仕事を辞めてしまう気持ちはとても理解できたよ。


作品自体に、高度経済成長で躍進した科学技術へのドライな視点が含まれているのもよく分かるよね。
その流れの中で弾かれてしまった人間がいるんだよ、ということは一つのメッセージなんだろう。

まさに今もAIが躍進しつつあって、どの仕事もAIに取って代わられるのではないかと不安に思っている人が多いし、実際に大きな変化があるのは間違いない。
本質的なメッセージは今の時代に通じるものがある気がする。


グラグラ揺れるカメラ。謎のピコピコした劇伴。
「コンピューター頭脳」というダサいネーミング。
どれも好き。

火事になったサンプラザの人たちは無事だったんだろうか。
イスケ

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