しんご

最強のふたりのしんごのレビュー・感想・評価

最強のふたり(2011年製作の映画)
3.9
原題の「intouchables」は英語の「untouchable」に相当し「触れられない者同士」と訳される。これはフィリップとドリスの関係を暗示する語であり、2人の間には障害・人種・貧富と多くの格差が存在する。

本作はそんな社会的な壁を乗り越えた2人の友情を描いた物話である。「人に優しく」というのは道徳では習うけど、その優しさが人によっては「差別」に感じられるという難しさがある。全身付随のフィリップを介護しようと志願する者たちは身元も確かで、何より奉仕精神に溢れている。しかし、自分が障害者であることを前提にしたその精神がフィリップには息苦しい。

そんな中現れた規格外のドリス。介護をする気は微塵もなく、単に失業保険の継続給付を受けるためにあえてフィリップの面接に落ちようと企む男を彼はなぜか採用する。「あげないよ、このチョコは健常者用だ。」と常識から考えたらあり得ないジョークを放つドリスは不謹慎だがなぜか陽気で憎めない。障害を笑い飛ばすフラットな彼をフィリップも好きだったんだろうな。

この気難しいフィリップとドリスが育む友人関係は軽い毒々しさを孕みながらも痛快。しかし、そんな2人の間にも「格差」が静かにかつ厳然と立ち塞がる。そんな差を考慮してフィリップがラストでする決断には彼の愛を感じた。あれは終わりじゃなくてまた新しい始まりなんだよね、きっと。

「September」をバックに車で疾走するシーンが幻想的な作品でした。
しんご

しんご