けんたろう

未来世紀ブラジルのけんたろうのレビュー・感想・評価

未来世紀ブラジル(1985年製作の映画)
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イカれたストーカーのおはなし。


なんだか優秀な人間が、華やかな夢と希望のない現実とに苛まれイカれていく過程を呆然と観ている感覚だ。

とにかく印象的だったのは、前半と後半とで主人公の様相が全く異なること。前半では的確な行動しか取らないスマートな人物であった彼が、後半ではその一挙手一投足が余りに愚かで何も上手くいかない只の間抜けへと変貌している。当然後半の姿は、見ると不快で仕様がない。だがもしかすると、より人間らしいのは寧ろ此方の方なのかもしれない。
はて、かつては自らが属した、血の通わぬ書類主義の跋扈する異常な管理型社会なるディストピアに、結局は自らが滅ぼされる羽目に陥ったか。

もしや役人及び役所批判もあるのかしら。とかく、汚らしいものを排除することで“綺麗”を目指す社会への強い嫌悪を感ず。