革芸之介

ミツバチのささやきの革芸之介のレビュー・感想・評価

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
5.0
オールタイムベスト級の大傑作。

自分はこの映画のおかげで映像の素晴らしさや絵画的、写真的な構図、カメラワークの動きなどを気にしながら観るようになり映画の観賞方法が多彩になりました。

本作は背景にスペイン内戦やフランコ独裁政権があります。しかしこれらの歴史的事実を知らなくても圧倒的に美しい映像の数々を堪能できます。

荒野の廃屋を俯瞰で撮影したロングショット、部屋の中を奥行のある縦の構図でとらえ、奥の部屋のドアが開き、画面内二重、三重フレームになるシーンはまるで額縁のような効果があり完全に絵画や写真を越えた映画独自の想像性と美しさがあります。

次に本作の活劇性を考えていきましょう。まだ本作を未見の方はもしかすると「静かな文芸映画」的な印象を持っているかもしれません。しかし、アナとイサベルが線路に耳をくっつけていると線路の振動でもうすぐ列車が通過することがわかります。実際、もう列車は見えていて、イサベルは線路から離れますが、アナは線路に残ります。アナが線路を離れた瞬間、カットが変わり横の構図で列車が通り過ぎます。このシークエンスの運動性、活劇性、緊張感、編集の素晴らしさ(アナ、イサベル、列車と交互にカットが変わる)映画の全てがつまってます。

まだまだ書きたりないのですが、少しでも多くの人に観てもらいたい傑作です。
革芸之介

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