くわまんG

ミツバチのささやきのくわまんGのレビュー・感想・評価

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
4.0
子供の感覚は取捨選択を知らず、何にでも悲しいほど鋭く反応します。やがて経験により記憶として体系化されるまで、それは限りなく柔らかで脆い。あの限定期間を実に細かくかつ端的に表現した…

ごちゃごちゃ御託は置いといて、このパッケージですよ。この子ね、見てくださいよこの子。ねぇ。

みどころ:
アナ・トレント
白昼夢のような観心地

あらすじ:
大戦前、右派と左派による血みどろの内戦が終結したスペインだったが、家庭分断など凄惨な爪痕が残っていた。
田舎の裕福な家庭に育った6歳のアナは、無垢でマイペースな女の子。高齢で偏屈な父、若く落ち着きの無い母、イタズラ好きで冷めた姉の四人暮らし。まだ、家庭内の微妙な不和がわからない年頃。
ある日、村で上映された『フランケンシュタイン』を観たアナ。そのラストシーンが頭から離れない。なぜ少女は死んだのか、なぜフランケンも死んだのか。答えの出ない“?”が、心の中の何かを開けた…。

このもやのかかったような感じは、まさに子供の頃に触れた“世界”。数十年前に得た不思議な感触が、夢見のようにフラッシュバックします。

アナの眼差しがあまりに雄弁で、説明はもちろん読解力さえも不要です。彼女を見れば誰もが守ってあげたいと思うはずで、作り手もまたそう思い、そこに政治的背景を絡ませ、私達が守るべきものを提示したのかもしれませんねぇ。