ニトー

捜索者のニトーのレビュー・感想・評価

捜索者(1956年製作の映画)
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これは家族の物語なのではないか。
戦争は直接描かず、しかし確実に戦争によって何かを狂わされてしまった男の話として、この「捜索者」はあるんじゃないでしょうか。監督のことを考えると、第二次大戦の参加者としての視線が確実に入っているはず。

「捜索者」におけるジョン・ウェインは「大いなる西部」におけるグレゴリー・ペッグのダークサイド、と言ってしまうとかなり自分の伝えたいこととはかけ離れてしまうのですが・・・対の存在とかそういうのではなく、暗黒進化というべきでせうか。そもそも双方ともに南北戦争の生還者ではあっても、個人としての人間の捉え方の側面が違うので単純な二項対立はできないのですが。
しかし、そう来るとやはり「大いなる西部」におけるパックがなんともやるせないなーとしみじみ思うのです。彼は戦争を知らない(というよりは性格上、積極的に避けてきたはず)人間であるものの、自身の虚栄心からイキる。けれどもやっぱり、その性質から卑怯な雑魚としてしか在り得なかったのだから。ジョン・ウェインにもグレゴリー・ペッグにもなれなかったどうしようもない塵芥。

そんなわけで、自分は「大いなる西部」と横に並べてこれを観ていました。
あとは風景というかモニュメント・バレーの撮り方がすごい印象的というか見ている間に不思議と胸にくる感覚があったなーとか。
それと、なんとなく序盤の家族を写し取るシーンのカメラの配置がすごい「家族ゲーム」の家族の切り取り方を想起させたんですけど、森田芳光監督はここを参考にしていたりするのだろうか。「家族ゲーム」の細かい部分は覚えていないんですけど、家族の物語だし、ある家族への闖入者として括れば松田優作とジョン・ウェインをつなぐこともできそうではあるですな。

なんだかほとんど「大いなる西部」についての言及になってしまっていますが、同時代の映画ということもありますし、「大いなる西部」大好きなので。そうでなくとも、やはり南北戦争後を描いたこの作品を外すことはできないと思います。
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