ニトー

パウ・パトロール ザ・ムービーのニトーのレビュー・感想・評価

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地上波でたまたまやっていたから観た程度のにわかもにわかでテレビ放送のシリーズの方は追っていないのだけれど、ニコロデオンということで要するにアメリカのアニメだということは先刻承知していた。というか、玩具界隈の情報をそれなりに追っているので玩具方面からはその存在は認知していた。

メリケンらしくでかいものから小さいものまでそろえているあたりの資本力はさすがといえる。

で、本編についてなのだけれど、設定がいまいちピンときていない。まあこういうのに細かい設定を求めるのはお門違いというものなのだろうけど、ケントだけは正直謎なのだ。身寄りないのかなんなのか…レスキューチームの人間は彼一人だけなのが。あと本国版の声優事情はよく分からないのだけど10年で3人が彼を演じているというのがちょっと日本だとない感じで驚いた。

しかしこの辺の余談ばかり拾ってたらあまりにもアレなので少しは真面目に話すが、テレビの方をちょっと確認した感じだとさすがに今回の劇場版ほどのクオリティではなくて安堵したというか。さすがにテレビの方はチャギントンくらいの作りこみだったので、流石に週間であのクオリティだったらやばいよな、と思ったので。

まあ同じCGアニメだとメカアマトとかは頭一つ抜けてるけど。

これがどういうコンセプトで立ち上げられた企画なのかは知らないが、見たまんま受け取るのであれば犬(カワイイ)+ビークル(かっこいい)の超わかりやすい足し算の図式である。メインターゲットはおそらく男児なのだが女児にも訴求したいというころのなのだろうか。

単純だがそれゆえに効果的ではあるかもしれない。なんだかんだで10年選手のアニメだし。

しかし、まあこれはこのアニメに限った話ではないのだが、犬だけが人間と同様の知性を与えられている(なにせ話す上に乗り物を乗りこなしあまつさえ人命救助にあたるのだから)一方で、ほかの動物はその一線を越えはしない。劇中で登場したほかの動物だけで言っても亀と猫がそうだ。どうでもいいけどニコロデオンで亀となるとタートルズを思い出すのだが、まあ関係はないだろうデザイン的にも。

もちろん、犬と人間は進化の過程においてほかの動物にはない双方向的な作用を及ぼしてきたことを考えれば、犬をほかの動物よりも人間側にコミットさせた存在として描くことは理解はできる。犬と見つめ合うとオキシトシンが分泌されるくらいだし。

気にかかるのは本作における猫の扱いである。どう見ても猫派と犬派の対立煽りだろこれ。

パウパトロール面々の、というか市井の人々の民意を蔑ろにして放縦な振る舞いをしてみせる市長が猫をたくさん侍らせ、その猫たちの高飛車もといお高く留まった感じなどは明らかに対比的である。「007」を筆頭に、というかそれとあとはポケモンくらいしか思い浮かばないが悪の組織のボスキャラはイスにふんぞり返って猫を撫でているというイメージがあるのだが、本作はその人口に膾炙した(してるのか?)イメージを明らかに引用している。

日本における猫の扱い、とりわけ女性作家が描く猫とはまた違うというか、なんだか犬と猫を巡る(個人的には猫の取り扱いが凄い気になるのだが)創作における表象というのは一考の余地がある題材なのではないかと思ったり。

話自体は犬の主役であるチェイスがある種のトラウマと乗り越えるという話で、オーソドックスな作りで特筆すべきことはないのだが、犬のくせに嗅覚の性能がオミットされるあたりの擬人化と言う名の作劇の都合に合わされる感じなどは、特権的地位を与えられることでむしろ種としての性能に枷をかけられているというなんだか奇妙な犬たちの描かれ方に面白みを感じてしまうのだが。
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