ion

歩いても 歩いてものionのネタバレレビュー・内容・結末

歩いても 歩いても(2007年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

きついなぁ。
ギスギス。ぢくぢく。ずっとじわじわ蝕まれてるような空気感。

死別のバツ1子持ちで再婚。
長男を亡くし複雑な心境の夫家族の家で、義母や義父たちとギスギスした冷戦を繰り広げる話。他人の家の話。

全員が色んな方向に人間臭くて、良くも悪くも「大人」の付き合い方。腹の中は明かさずも、少しずつ毒をちらつかせて牽制しあっている感じ、最高に居心地が悪い。
見てるだけなのにもうずっと気まずくてストレスがすごい。
特におばあちゃんが見せる人間の、この嫌味ったらしい陰湿な感じ、嫌いな人間同士がニコニコと表面を撫で合っている感じ、撫でるフリしてギリギリとつねっている感じ、たまらない…。
大人が水面下で睨み合ってるところ、喧嘩、空気感、子供は敏感にちゃんと察してるし、ちゃんと気を遣っている。なんでもないようなフリしながら。

役者が本当に、樹木希林が本当にうまいな…。この、極力身内にいて欲しくない嫌
ァなおばあちゃん…。もう樹木希林がそういう人にしか見えない。しかし彼女も気難しくて多忙な夫を支えながら一生懸命に3人もの子供を育て上げて、あげく長男を亡くし次男は死別した子持ち女と再婚。
昔の感覚で精一杯生きてきた人間に、いきなり今の風潮に順応しろなんていうのはやっぱりちょっとしんどい話かもしれない。

人は老いる。世代は代わる。ヤなヤツもいいヤツもいつか死ぬ。誰かが嫌いな誰かも他の人にとっては大切で、その人にも思うところあって、それぞれが悩んだり傷ついたり憎まれたりしながら少しずつ思い出として誰かの中で生きてくんだ。
鑑賞後、なんとも言えない気持ちになる映画。是枝監督は本当に人間の描き方が生々しくて上手いなぁ。
ion

ion